シンガポール発脱炭素SaaSベンダーが日本市場へ、三菱商事やみずほ銀行などと提携:脱炭素
SaaSベースの脱炭素ソリューションを展開するシンガポールのTerrascope(テラスコープ)が、日本法人の「Terrascope Japan株式会社」を設立するとともに日本国内市場でサービスを開始することを発表した。
SaaSベースの脱炭素ソリューションを展開するシンガポールのTerrascope(テラスコープ)は2023年6月15日、東京都内で会見を開き、日本法人の「Terrascope Japan株式会社」を設立するとともに日本国内市場でサービスを開始することを発表した。国内で事業展開を開始するに当たり、三菱商事、日本テトラパック、みずほ銀行との戦略的パートナーシップを締結したことも明らかにした。現在の主力顧客である食品/農業関連企業を中心に、消費財製造業、アパレル、小売業などさまざまな産業向けにTerrascopeのソリューションを提案していく方針である。
会見の登壇者。左から、日本テトラパック 代表取締役社長のアレハンドロ・カバル氏、三菱商事 執行役員 “食料本部長”の小林秀司氏、Terrascope サステナビリティアドバイザーの小木曽真理氏、同社 CEOのマヤ・ハリー氏、Olam Grpup 共同創設者兼グループCEOのサニー・ジョージ・ベルギーズ氏、みずほ銀行 サステナブルビジネス部長 執行理事の角田真一氏[クリックで拡大]
Terrascope本社 CEOでTerrascope Japanの代表取締役も兼任するマヤ・ハリー氏は「当社の脱炭素ソリューションは、GHG(温室効果ガス)プロトコルのスコープ1と2だけでなく、スコープ3まで含めて、計測と管理、削減計画の提案と実施に至るまでをエンドツーエンドをカバーする」と語る。
企業の脱炭素取り組みでは、サプライチェーンにおいて調達元から販売先まで関わるスコープ3が最大の課題となっている。スコープ3を含めてGHG排出量を包括的に計測できている企業は全体の1割以下だが、この包括的な計測ができなければ脱炭素の取り組みは2〜3倍難しくなるともいわれている。「日本企業のうち、スコープ3を重視するGHG排出量削減の国際認証であるSBTi(Science Based Targets initiative)に基づく目標を掲げているのは約30%にとどまる」(ハリー氏)という。
とはいえ、日本企業による脱炭素を含めたサステナブル投資は、2021年に前年比で65%増となるなど加速している。脱炭素への取り組みの積極性を示すために、気候変動に関する情報開示を促すTCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)のサポーターの3分の1を日本企業が占めており、これは国別でトップだ。ハリー氏は「今回はまさに最適なタイミングで日本市場に参入できたと考えている」と強調する。
CDPのゴールドパートナー認定を受け、さまざまな産業に事業展開を拡大へ
なおTerrascopeは、シンガポールに本社を置きグローバルで食品/農業関連事業を展開するOlam Grpup(オーラム・グループ)との提携や投資によって顧客を拡大してきた背景があり、特に農業とそのサプライチェーンに関して深い専門知識を有している。
日本市場参入におけるパートナーシップでも、三菱商事の場合は食料原料を手掛ける食料本部との提携が起点となっており、日本テトラパックとの提携も食品/飲料分野におけるサステナビリティフットプリント情報を製品レベルで顧客に提供することを目的としている。現時点での日本企業のユーザーとしても、ポッカサッポロフード&ビバレッジや三菱食品、三菱商事とOlam Groupの合弁会社であるMCアグリアライアンスなどの名前が挙がっている。
ただし、Terrascopeは2023年5月、環境影響を管理するためのグローバルな情報開示システムを運営する英国のNGOのCDPから、グローバルソフトウェアソリューションのゴールドパートナーに認定されいる。これは、アジア発の脱炭素SaaSソリューションとしては初の事例であり、CDPに情報開示を行っている1万8000社以上の企業に推奨されることを意味している。Terrascopeとしても、今後は主力分野の食品/農業関連企業にとどまらずさまざまな産業分野に事業を展開していく構えだ。みずほ銀行とのパートナーシップでは、アジア太平洋地域の法人顧客に脱炭素化支援サービスを提供するとしており、対象となる産業分野は多岐にわたるとみられる。
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