レゾナックがDX関連エンジニアが200人所属するAMIを買収:製造マネジメントニュース
レゾナックは、産業向け自動化ソリューション事業を手掛けるメキシコのAMI Automationの株式を100%取得することを決定した。
レゾナックは2023年6月12日、産業向け自動化ソリューション事業を手掛けるメキシコのAMI Automation(以下、AMI)の株式を100%取得することを決定したと発表した。2021年2月5日にAMIの50%の株式を取得しており、その後5年以内に残りの50%の株式を取得するオプションを保有していた。今回は、レゾナック子会社を通じて残り50%の株式を追加取得し、100%取得を完了する。同手続きの完了は2023年第3四半期(7〜9月)を予定している。
AMIの株式100%取得によって、レゾナックのグラファイト事業は、黒鉛電極という「モノ」の提供から製造現場のデジタル化を支援する「サービス」を提供する事業モデルへシフトしていく。既に、AMIの電気製鋼炉(以下、電炉)運転最適化ソリューションにより、顧客の電炉運転の高効率化、安全性の向上、省エネルギー、温暖化ガス排出量削減といった大きな付加価値の提供を開始している。
AMIは、ハードウェア/ソフトウェア/サービスを通じて自動化ソリューション事業を幅広い産業にグローバルに展開している。特に鉄鋼業界で使用される電炉向けの運転最適化ソフトウェアは、今後も市場成長が大きく見込まれる北米で生産量ベースで約90%の電炉鋼生産に活用されている。
加えて、約20人のAI(人工知能)エンジニアを含む、約200人のDX(デジタルトランスフォーメーション)関連エンジニアが所属している。今後は彼らが、レゾナックのDXの強みの源となる計算科学/情報科学を扱う計算情報科学研究センターや、DX活動を推進するCDO(最高デジタル責任者)組織と連携し、レゾナックグループ全体のDX化を加速していく。さらに、電炉向けの運転最適化システムの提供にとどまらず、AMIは製紙、セメント、石油など、さまざまな幅広い産業向けに生産自動化/制御ソリューションを提供しており、今後は製造現場の支援についても共同プロジェクトを進める。
一方、レゾナックは、グラファイト事業で世界6拠点に生産設備を有し、高品質な黒鉛電極を展開している。グラファイト事業では、金属スクラップを溶解し鉄鋼を生産する電炉の電極として使用されている黒鉛電極を生産/販売している。鉄鉱石から鉄鋼を生産する高炉に比べて、電炉は約4分の1のCO2排出量で鉄鋼を生産できるため、世界全体で高炉から電炉への置き換えが進んでいる。レゾナックの調べによれば、2028年には、年間5万〜7万トン(t)の新たな黒鉛電極の需要が見込まれる。特に、電炉の割合が7割を占める米国での電炉新設計画が増加。レゾナックが得意とする28インチ(700mm)以上の大口径電極の需要が今後ますます伸びることが期待されている。
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