「Red Hat Device Edge」は2023年9月に正式リリース、ABBが「Edgenius」に採用:エッジコンピューティング(2/2 ページ)
レッドハットが米国開催の年次イベント「Red Hat Summit 2023」で発表した同社製品の新機能について説明。製造業関連では「Red Hat Device Edge」のアップデートや、大手産業機器メーカーであるABBとシーメンスによる取り組み事例などを紹介した。
ABBとシーメンスの事例
Red Hat Summit 2023では、Red Hat Device Edgeを先行評価してきたABBによる活用事例が報告された。
ABBはプラントにおけるプロセスオートメーションをSaaSベースで最適化するソリューション「ABB Ability Edgenius(以下、Edgenius)」を展開している。Edgeniusを広げていく上で課題になっていたのが、規制やセキュリティによるネットワーク接続の問題、リソースが制限される環境下で運用している制御機器にも対応できるようにすることだった。
これらの課題解決は、まさにRed Hat Device Edgeの開発コンセプトにも当てはまる。ABBは、プロセスオートメーション機器の制限があっても、Edgeniusの展開やクラウドとの連携方法を標準化し、一貫性を持たせるためにOpenShiftとRed Hat Device Edgeを採用したソリューション開発を進めているという。
一方、シーメンスの事例は、スマート工場として広く知られているアンベルク工場におけるエンタープライズITシステムのモダナイズが起点となっている。これまでのモノリシックなシステムを解体してモジュール化、マイクロサービス化を進めて柔軟な機能変更やアップデートを可能とするために、OpenShiftとレッドハットのコンサルティングを活用した。
この事例で重要なのは、今後の取り組みとしてITとOTの融合に向けて、製造ITシステムであるPLMやMES、制御機器のPLCとの連携も視野に入れていることだろう。そこで、産業用PCのようなリソースの限られるハードウェアにも適用可能なRed Hat Device Edgeに対して高い評価が得られているという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 組み込み機器の進化の鍵は「クラウドネイティブ」にあり
組み込み機器のエンジニアからは“対岸の火事”に見えていた「クラウドネイティブ」だが、自動車や産業機器の分野で積極的な取り込みが図られるなどその影響は無視できなくなっている。 - 組み込みエンジニアも知っておきたい「クラウドネイティブ」とは
IoT/クラウドロボティクス時代のシステム開発を加速化する仮想環境の活用について解説する本連載。第3回は、IT分野で浸透してきている「クラウドネイティブ」という考え方とその狙い、支える技術などについて紹介した上で、組み込み分野におけるクラウドネイティブの可能性について説明する。 - オムロンとの協業を深化させるレッドハット、今後の成長は“エッジ”にあり
レッドハットが2023年度の事業戦略を説明。同社は中長期の成長に向けて産業機器や車載機器などのエッジにおけるビジネスの基盤構築に注力しているが、その代表的なパートナーになっているのがオムロンだ。 - オムロンが産業用PCをクラウドネイティブへ、「Red Hat OpenShift」の採用で
レッドハットは、オムロンが産業用PC向けに開発を進めている「仮想化制御プラットフォーム」のPoC(概念実証)のコンセプトモデルに、Kubernetesプラットフォーム「Red Hat OpenShift」が採用されたと発表した。 - レッドハットがエッジ市場に本格参入、「Red Hat Device Edge」を展開
エンタープライズ向けLinuxディストリビューション大手のレッドハット(Red Hat)が、エッジコンピューティング市場に本格参入する。「KubeCon+CloudNativeCon North America 2022」において、産業機器向けにコンテナアプリケーションを柔軟にデプロイするソリューション「Red Hat Device Edge」を発表したのだ。 - レッドハットが車載ソフトウェア、車載Linuxの機能安全対応や保守管理を支援
Red Hat(レッドハット)が車載ソフトウェアに参入する。車載情報機器で採用拡大が見込まれる車載Linux向けに、開発ツールやコンポーネントを展開する。車載情報機器向けのOSはGoogle(グーグル)の「Android」と車載Linuxの2つが主流となっており、グーグルへの依存を懸念する自動車メーカーやサプライヤーが車載Linuxに注目している状況だ。