ダイハツ工業は2023年5月19日、認証手続きで新たな不正が判明したと発表した。
2023年4月にはトヨタ自動車へのOEM(相手先ブランドによる生産)を含む海外向け4車種の側面衝突試験(UN-R95)で不正が発覚。量産時の仕様にない変更を加えたテスト車両で試験を実施していた。これを受けて社内の総点検を進める中で、新たな不正が発覚した。
今回はポール側面衝突試験(UN-R135)での不正で、本来であれば車両の左側と右側の両方で試験を実施する必要があった。ダイハツは左側のポール側面衝突試験は実施したが、そのデータを右側のデータとして転記し、認証で提出した。社内に右側の試験データは残っていないという。5月22日週にも社内で再試験を行う。
今回の不正の該当車種はダイハツ「ロッキー」とトヨタ自動車「ライズ」のハイブリッド車(HEV)だ。どちらも日本国内向けで、滋賀(竜王)工場(滋賀県竜王町)で生産している。両モデルのエンジン車は正規にポール側面衝突試験を実施したという。該当車種は2021年6月に認証を取得し、11月に発売。累計販売台数はロッキーHEVが2万2329台、ライズHEVが5万6111台に上る。該当車種の出荷、販売は5月19日に停止した。
ポール側面衝突試験とは、電柱などを模擬したポールに台車に乗せた車両を衝突させる試験だ。ポールに対して75度の角度で衝突させ、乗員を模したダミー人形の頭や肩、胸、腹などへの衝撃の入力が一定値以下であること、ドアが外れないこと、衝突後の燃料漏れが一定以下の量であることなどを確認する。
正規に認証を取得したロッキー/ライズのエンジン車と、HEVの左側の試験データから、HEVの右側のポール側面衝突試験についても「安全に問題はなく、余裕のある数値だと考えられる」(ダイハツ 社長の奥平総一郎氏)としている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- ダイハツの認証不正、トヨタ社長「×を○に修正するより根が深い」
ダイハツ工業が、海外向け4車種の側面衝突試験において認証申請時の不正行為があったと発表した。 - エアバッグ展開時の衝撃力はウサイン・ボルトの全力タックルと同じ
自動車の安全システムとして知られるエアバッグだが、エアバッグが展開する際のさまざまなリスクはあまり知られていない。エアバッグ3部作の最終回である今回は、エアバッグ展開のリスクやエアバッグ搭載車についての注意点を紹介する。 - エアバッグが開かないのは衝突安全ボディのせい!?
衝突事故が発生した際には、必ず展開して乗員を守ってくれると信じられているエアバッグ。しかし実際にはエアバッグが展開しないことも多い。これは、衝突安全ボディが、エアバッグを展開する必要がないレベルまで衝撃を吸収してくれているからだ。 - エアバッグの前に付く「SRS」の意味を理解しよう
今や「装備されていて当たり前」の安全システムとなったエアバッグについて、今回から3回に分けて解説する。エアバッグの前に付く「SRS」には、エアバッグの根幹を成す極めて重要な意味があった。 - シートベルトはドライバーに何とか着用してもらうために進化した
自動車の安全システムとして長い歴史を持っているのがシートベルトだ。現在は、装着するのが当たり前になっているが、ここまで来るのにさまざまないきさつやシステムの進化があった。また、衝突事故時に乗員を座席に固定するプリテンショナーをはじめ、今でも進化を続けているシステムでもある。 - 豊田自動織機がエンジン3機種で排ガス認証不正、フォークリフトの出荷停止へ
豊田自動織機は、日本市場向けフォークリフト用エンジンについて、経年劣化による排出ガス国内規制値の超過と、排出ガス国内認証に関する法規違反の可能性を確認したと発表した。 - 日野でエンジン認証に不正、耐久試験中のマフラー交換や燃費測定装置の校正値変更
日野自動車は2022年3月4日、日本向けのエンジン4機種に関する排ガスや燃費の認証試験に不正行為があったと発表した。不正行為が行われたのは、平成28年排出ガス規制(ポスト・ポスト新長期規制)の対象となるエンジンだ。