機運高まる高圧水素ステーション向けOリング、ハノーバーメッセ機に欧州で実績も:ハノーバーメッセ2023
高石工業は「ハノーバーメッセ2023」において、高圧水素ステーション用Oリングを展示した。
高石工業は「ハノーバーメッセ(Hannover Messe)2023」(2023年4月17〜21日ドイツ時間、ハノーバー国際見本市場)において、高圧水素ステーション用Oリングを展示した。
今回のハノーバーメッセで、大きなテーマの1つとなったのが水素利用だ。会場のハノーバー国際見本市場に最寄りのドイツ鉄道の駅から一番近く、人の流れが多いホール13を中心に関連企業約500社がソリューションを展示した。2023年4月には、ドイツで稼働していた最後の原発が運転を停止しており、代替エネルギーの選択肢として関心は高まっている。
1948年創業の高石工業は国内3カ所とベトナムに工場を設け、主に温水洗浄便座など住宅設備向けにパッキンやOリングなどを生産している。九州大学 水素材料先端科学研究センター 教授の西村伸氏から依頼を受けて2008年から水素曝ろ用試験片の製作に着手し、2013年に−40℃の水素環境で使えるOリングを完成させた。同年の「中小企業総合展 東京」に出展した際に受賞したベストプラクティス賞の副賞として、2014年にハノーバーメッセに初めて出展した。以降、コロナ禍による中断期間を除き、連続出展している。
高石工業 代表取締役の高石秀之氏は「初めて出た時に良い手応えが得られたので、1回ではもったいないから3回は続けて出ようと社内で話をした。3回続けて出たら新しい引き合いが増えてきた。それでまた続けて出ようとなり、今回で8回目の出展になった。2014年に出た時は、水素関連の展示の規模も小さく、展示されてい内容も技術開発の延長のようなものが多かった。今回は出展者の数も増え、量産して発売するという話を多く聞いており、水素が次世代のエネルギーの1つとして認知されてきていると感じる」と話す。高石氏本人も来場者の目にとまり、記憶に残るよう合気道着を着用するなど工夫もこらす。
水素は非常に小さい分子のため物質を透過しやすいが、高石工業は独自の配合により高圧の水素にも耐えられるOリングの開発に成功した。もともと海外企業との取引はなかったが、ハノーバーメッセに出展以降、のべ数十社にサンプルを求められ、実際に欧州の水素ステーションに採用される例も出てきた。
高石氏は「水素は必ず大きくなっていく産業だと思う。これから10年、20年かけてわれわれの大きな事業に育ってほしいと期待している。創業100周年を迎えた時には、水素が高石工業の新たな看板の1つになっていてほしい」と意気込む。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- ハノーバーメッセが開幕、脱炭素/水素やAIなどテーマに
2023年4月17日(ドイツ時間)、世界最大級の産業見本市「HANNOVER MESSE(ハノーバーメッセ)」が開幕する。会期は同月21日までの5日間。世界各国から4000以上が出展し、最新技術を展示する。 - 脱炭素、データスペース、デジタルツイン実装に注目、ハノーバーメッセ2023
世界最大級の産業見本市「HANNOVER MESSE(ハノーバーメッセ)」の主催者であるドイツメッセは、2023年4月17〜23日にドイツ・ハノーバー国際見本市会場で開催される「ハノーバーメッセ 2023」の概要について紹介し、日本からの出展と来場を訴えた。 - 高圧水素タンクをポータブルサイズに、トヨタが「水素カートリッジ」を開発
トヨタ自動車とウーブン・プラネット・ホールディングスは2022年6月2日、手軽に水素を持ち運びできるポータブル水素カートリッジ(高圧水素タンク)のプロトタイプを開発したと発表した。実用化に向けて、静岡県裾野市で建設中のウーブンシティーの他さまざまな場所で実証を行う。 - グリーン水素の製造と活用の実証開始、デンソーとトヨタが福島で地産地消モデル
デンソーとデンソー福島は、トヨタ自動車と共同で、グリーン水素の製造と工場での水素活用の実証を開始する。水素製造から利活用までのパッケージと規模に応じた水素量の導入モデルを構築し、水素地産地消モデルの展開を目指す。 - 将来、水素エネルギーは工場にどうやって供給されることになるのか?
将来、工場でも水素エネルギーを活用することになるかもしれない。その時、どのような課題が生じ得るのか。福島県浪江町で実証実験に取り組む日立製作所担当者に話を聞いた。 - 住友ゴムの白河工場が目指す水素の地産地消モデルとは
住友ゴム工業は、福島県白河市の白河工場で、水素エネルギーを活用したタイヤ製造に成功した他、水素の地産地消モデルの構築を進めている。