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製造業ならではのAI展開を目指す武蔵精密工業、その2つの挑戦(前編)製造現場向けAI技術(2/2 ページ)

自動車部品メーカーの武蔵精密工業は、イスラエルのSIX AIとの協業により、「モノづくり×AI」による新たな価値創出に取り組んでいる。外観検査装置を展開するMusashi AIと、自律搬送ロボットソリューションを展開する634 AIの取り組みを紹介する。

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AI外観検査装置を展開するMusashi AI

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Musashi AIの村田氏

 「モノづくり×AI」として最初に取り組みを開始したのがAI外観検査装置だ。2019年7月にMusashi AIを立ち上げ、武蔵精密工業の製造現場での実証などを進めながら、金属加工品の目視検査を代替するAI外観検査装置の外部展開を進めてきた。「最初は3人で開発から実証、交渉や課題整理まで全て行い、苦労した」とMusashi AI 代表取締役の村田宗太氏は当時を振り返る。

 提案を進める中で大きな転機となったのが、トヨタ自動車への導入だ。2020年にトヨタ自動車 本社工場のトランスミッション部品の生産ラインにAI外観検査装置を導入し2020年12月から量産稼働を開始した。その後、段階的に導入を増やし、現在は合計8台のAI外観検査機を導入しているという。村田氏は「それ以降は、自動車業界のみならずさまざまな業界から引き合いをもらえるようになった」と語る。現在は19社、56件の導入件数となっているという。

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Musashi AIの外観検査装置標準機。コンパクトサイズで製造現場に設置しやすくしている。標準機を土台としてさまざまなカスタマイズも行える[クリックで拡大]

 Musashi AIのAI外観検査装置の強みが、製造業と製造現場のことを理解しているという点だ。もともと武蔵精密工業内で活用してきた技術が土台となっている他、現在も武蔵精密工業の本社内に立地しているため、AIアルゴリズムの評価や設備の評価も製造現場の状況に合わせた形でブラッシュアップできる。

 さらに、AIに関連するソフトウェアだけでなく、それぞれの製造現場で使いやすいハードウェアをニーズに合わせて開発して導入できるという点も特徴だ。「従来は製造現場でAIを導入しようとすると、AIやソフトウェアのシステムインテグレーター、設備メーカー、設備のシステムインテグレーターなど、さまざまな関係者との調整が必要だったが、多くの製造現場がその調整に苦しんで挫折してきたと聞く。そういうことがないように、外観検査に関わる領域はMusashi AIで一貫して提供することを重視している」と述べている。

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ロボットを組み合わせたカスタマイズの例[クリックで拡大]

業種、地域、提供方法を拡大し成長を続ける

 今後はさらに「導入業種の拡大」「地域の拡大」「提供方法の拡大」などに取り組み、導入を増やしていく方針だ。「導入業種の拡大」は「従来は自動車関連での導入が中心だったが、半導体やフィルムなどさまざまな業種から引き合いも来ている。これらの顧客のニーズを把握し、これらに合ったアルゴリズムは装置を提供していく」(村田氏)。

 「地域の拡大」については、新たに北米に子会社を設立し、展開を開始する。「日本での成果をまず北米で展開し、その後他地域での展開も考えている」(村田氏)。

 「提供方法の拡大」については、現在装置として提供しているが、クラウド環境でソフトウェアのみで展開する形など、新たな提供方法を模索しているという。「ハードウェアの提供も得意としているが、Musashi AIそのものはあくまでもソフトウェア企業だ。地域や業種に合わせた形で展開する。ハードウェアで提供した方がいい場合はその形で提供するが、ソフトウェアのみの提供なども進めていく。北米ではクラウド経由でのニーズもあり対応を進めているところだ」と村田氏は語っている。

 今後の市場性について村田氏は「例えば、武蔵精密工業の中でも製造業の作業は『262』の比率で分かれるといわれている。本質的なモノづくりの作業が『6』でそこまでの搬送や準備作業が前の『2』、終わった後の搬送や準備作業が後の『2』だ。こうした本質的なモノづくりの『6』以外の部分の自動化を進めることを考えても、日本だけで大きな需要が見込める。うまく当てはまる領域を見つけ出していく」と語っている。

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