AIを用いてプラントを自動運転する機能を提供開始、操作効率化でコスト低減効果も:製造現場向けAI技術(1/2 ページ)
NTTコミュニケーションズは横河ソリューションサービスとともに、日本初となる、運転員の操作を学習したAIを用いてプラントの自動運転を実現する「オートパイロット」の提供を開始すると発表した。
NTTコミュニケーションズは2023年1月30日、横河ソリューションサービスとともに、日本初となる、運転員の操作を学習したAI(人工知能)を用いてプラントの自動運転を実現する「オートパイロット」を、「AIプラント運転支援ソリューション」の新機能として同年2月から提供を開始すると発表。NTTコミュニケーションズ本社(東京都千代田区)およびオンラインで記者会見を開き、オートパイロットの概要を説明した。プラントの規模などにもよるが、導入費用は年間で500万〜700万円になる見込み。
AIを活用した運転の効率化で原材料などのコストを低減
化学業界では、海外メーカーが現地で仕入れた安価な原材料で大量生産した製品が国内に流入し、国内メーカーは高機能な製品を市場のニーズに合わせて変種変量生産する状況になっている。そのため、工場では複雑なオペレーションが求められ、熟練者による手動運転を余儀なくされる場面も多い。一方で運転員によって運転品質にばらつきが生じ、原材料や燃料の無駄につながる可能性がある他、労働人口の減少による作業者の確保も難しくなっており、仮に確保できたとしても技能の習得に長い期間を要するなどの課題があった。
これらの問題を解決するため、NTTコミュニケーションズと横河ソリューションサービスは2017年より共創を進めており、「AIプラント運転支援ソリューション」においてガイダンス表示によりプラントの手動運転を支援する「ガイダンス機能」を2022年4月より提供してきた。
新たに提供を始めたオートパイロットは、プラントの各種センサーから取得した温度や圧力などのデータと、運転員の過去の操作履歴より模倣学習で運転員の操作を学び、AIがプラントを自動運転するものだ。従来技術では難しかった領域の自動運転が可能になり、プラントの運転を大幅に効率化し、原材料やエネルギーコストの低減を実現する。
AIの動作保証範囲は事前にプラントの担当者と決定し、プラントの状況が動作保証範囲から外れた場合は、運転員に即日通知され、手動運転に切り替わる。動作保証範囲に復帰した場合は、運転員の判断の基、オートパイロットを再開できる。
また、自動再学習によって生産量の変動や設備の経年劣化などがもたらす状況変化に対応する仕組みを取り入れた。現在と似たような状況で過去にどのような操作がされたかを蓄積されたデータの中から抽出し、毎分再学習を行う。それにより、状況が変わったとしても最新の状況に沿ったルールをAIが導き出し、最適な自動運転を実行する。
NTTコミュニケーションズ ビジネスソリューション本部 スマートワールドビジネス部 スマートファクトリー推進室 担当部長の伊藤浩二氏はオートパイロットとガイダンス機能の違いについて「運転者の作業を学習するまでは同じだが、ガイダンス機能は自動車のカーナビゲーションシステムのように、最適な手動運転の数値を示すまでにとどまっていた。オートパイロットは、実際に運転まで行うところが大きな違いになっている」と語る。
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