世界最大規模の微細藻類生産設備「C4」で実証を本格開始、排気ガス中のCO2を活用:脱炭素
ちとせ研究所は世界最大規模となる微細藻類生産設備「CHITOSE Carbon Capture Central」での実証を本格的に開始した。世界初の取り組みとして、産業分野から生じる排気ガス中のCO2を用いた5ha規模での微細藻類生産を行うという。
ちとせ研究所は2023年4月25日、世界最大規模となる微細藻類生産設備「CHITOSE Carbon Capture Central(以下、C4)」(マレーシア・サラワク州)での実証を本格的に開始したと発表した。
今回の実証では、隣接する火力発電所から発生する排気ガス中の二酸化炭素を活用して、微細藻類を生産する。産業分野から生じる排気ガス中のCO2を用いた5ha(ヘクタール)規模での微細藻類生産は世界初の取り組みだという。
なお、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が推進する「バイオジェット燃料生産技術開発事業/微細藻類基盤技術開発」の一環として行われている。
今後は、この設備を利用した微細藻類の培養実証を本格的に進め、持続可能な航空燃料(SAF)の原料であり、カーボンリサイクル技術の1つでもある微細藻類の安定的な大量培養技術の確立を目指す。
2022年度までは排気ガス成分のモニタリング方法検討などで研究開発を推進
ちとせ研究所は、2020〜2022年度にかけて、フォトバイオリアクター技術を応用した大規模微細藻類培養システムの構築に向けて、隣接する火力発電所から排出される排気ガス成分のモニタリング方法検討や微細藻類株の選定、同株(どうしゅ)の培養に利用可能な商業用培地の開発、培養期間と曝気(ばっき)条件、培養濃度がバイオマス生産性に与える影響の検証などで研究開発を推進した。
そして、今回のC4稼働開始に伴い、上記の研究開発成果を踏まえて、2023〜2024年度にわたり、隣接する火力発電所から生じる排気ガス中のCO2を活用し、長期的かつ大規模な微細藻類生産の実証試験を本格的に開始する。
実証実験開始の背景
今後、航空需要は長期的に拡大することが見込まれており、CO2排出量削減による地球温暖化抑止対策が国際民間航空機関(ICAO)をはじめとした航空分野における喫緊の課題だ。対応策として、SAFの導入が必要不可欠な手段の1つに位置付けられている。
このような背景の下、NEDOは2020年度から、バイオジェット燃料生産技術開発事業のテーマ「熱帯気候の屋外環境下における、発電所排気ガスおよびフレキシブルプラスチックフィルム型フォトバイオリアクター技術を応用した大規模微細藻類培養システムの構築および長期大規模実証に関わる研究開発」に取り組んでいる。実施者はちとせ研究所が務める。
同テーマでは、バイオマス原料などから生成された純度100%のSAF「ニートSAF」の原料で、カーボンリサイクル技術の1つである微細藻類に関する実証事業を推進中だ。微細藻類の選定や育種、多様な培養方法について、商用化された際に培養するユニット単位となる規模で比較検証などの実証事業を行っている。
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