新たな海洋製品誕生を支援、“日本で唯一”の海洋試験設備を持つOKIコムエコーズ:モノづくり最前線レポート(2/2 ページ)
OKIは、海洋分野を強みと位置付け、事業強化を図っている。OKIの海洋事業への取り組みと、海洋環境での試験設備をそろえるOKIコムエコーズの取り組みについて紹介する。
静岡県沼津市の内浦湾で海洋環境を使った試験も
OKIの海洋事業強化の中でカギを握る子会社の1つがOKIコムエコーズである。OKIコムエコーズは耐環境性の付与技術(ラギダイズ技術)に強みを持つ静岡OKIと、海洋計測エンジニアリング技術に強いOKIシーテックを経営統合して2022年4月に新たに誕生した企業である。音響技術と耐環境性技術を強みとした通信装置やセンサーの開発を行う音波応用・センサー事業、海洋関連の計測や試験、解析、コンサルテーションを行うエンジニアリング事業、防衛分野でのソナーの整備や保守を行うオーバーホール事業の3つの事業を展開している。
OKIコムエコーズの特徴が、静岡県沼津市の内浦湾に立地しており、実際の海洋環境を使ったさまざまな試験や評価が行える点だ。計測用バージ「SEATEC II」や試験用船舶「ひびき」、無響水槽、専用桟橋などを保有し、さまざまな試験を行っている。特に、バージ内の開口部から評価機材を海に下して評価できる「SEATEC II」は高い評価を受けている。海洋環境での計測用バージの設置は、漁業関係者との折衝なども難しい場合が多く、「日本国内では唯一」(OKIコムエコーズ)としている。
用途としては、OKIの防衛関連での評価試験の他、海中用のセンサーやソナー、AUV(自律型水中ビークル)関連のさまざまな試験などで利用されるケースが増えているという。OKIコムエコーズ 代表取締役社長執行役員の大塚竜治氏は「水槽環境と違い、海洋環境ではさまざまな音が発生しており、これらの中から必要な音や不必要な音を判別するにはノウハウが必要になる。これらに対応できるかどうかを実際に使用状況に近い形でできるため、海洋向けの計測/評価施設として高く評価を受けている。既に1年先の予約も埋まっているほどだ」と大塚氏は述べている。
ただ、この計測用バージは建造から30年が経過しており、2023年10月に新たなバージへと更新する予定。現在のものより開口部を拡大する他、屋内作業スペースも拡大する計画だとしている。
加藤氏は「今までも民間向けの海洋事業をやってこなかったわけではないが、単発で継続性がなかった。ただ、防衛で培った技術は水中音響学などに基づくもので、基本的には防衛事業に限ったものではなく、民間でもさまざまな形で使えると考えている。洋上風力発電などで海底状況の探査を行うケースや、海の土木工事の負荷軽減に取り組む動きなど、さまざまな可能性が広がっている。持っている技術を示しながら新たな展開を作り出していきたい」と今後の方向性について語っている。
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