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世界初! 超音波AIで冷凍マグロの鮮度を非破壊評価、将来的にはおいしさの判定もFAニュース(1/2 ページ)

富士通と東海大学の協働研究グループは2022年12月20日、東海大学静岡キャンパス(静岡県静岡市)およびオンラインで記者会見を行い、超音波AI(人工知能)技術を活用して冷凍マグロの鮮度を非破壊のまま評価することに世界で初めて成功したと発表した。

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 富士通と東海大学の協働研究グループは2022年12月20日、東海大学静岡キャンパス(静岡県静岡市)およびオンラインで記者会見を行い、超音波AI(人工知能)技術を活用して冷凍マグロの鮮度を非破壊のまま評価することに世界で初めて成功したと発表した。

日本食文化の普及で伸びる漁獲量、マグロ市場は5兆円規模に成長

 すしや刺身など日本食文化の広がりを背景に、1950年に50万トンにも満たなかった世界の主要マグロ類の漁獲量は、2019年には550万トンを超えた。また、2020年に5万トン以上を漁獲、生産した国は15カ国に上るなど、国や地域として見ても広がりを見せている。マグロのグローバルの市場規模は現在5兆円とも言われている。

世界のマグロ資源変動
世界のマグロ資源変動[クリックで拡大]出所:東海大学
東海大学 海洋学部 水産学科 研究員の八木雅文氏
東海大学 海洋学部 水産学科 研究員の八木雅文氏 出所:富士通

 天然マグロの大部分は漁獲時に船上で急速冷凍される。品質の判別には、尾の付け根部分を切断し、その断面から脂の乗り具合や色味、鮮度を評価する尾切り選別をはじめとする破壊検査が主に用いられている。ただ、品質を評価できるタイミングや適切に評価できる熟練者が限られる他、また評価できる部位が尾周辺のみで限定的となっている。東海大学 海洋学部 水産学科 研究員の八木雅文氏は「良品の検体と思って購入してさばいた結果、頭側に行くにつれて血栓が広がっているケースもある。マグロをさばいてみるまで品質の状態は分からず、非破壊で全体を見る技術開発が必要」と語る。

マグロ業界を悩ます物質的品質異常
マグロ業界を悩ます物質的品質異常[クリックで拡大]出所:東海大学

 細胞内でエネルギーの供給源となるATP(アデノシン三リン酸)は死後にADP(アデノシン二リン酸)、AMP(アデノシン一リン酸)、IMP(イノシン酸)、HxR(イノシン)、Hx(ヒポキサンチン)へと順に分解されていく。AMPやIMPはうま味成分だが、そこから先の成分が増えると鮮度が低下していく。「鮮度の低下がどの段階にあるのかを客観的に判別できる技術開発も必要となる。マグロの品質評価の第一歩として、鮮度不良の判別に取り組んだ」(八木氏)。

マグロ業界を悩ます物質的品質異常
マグロ業界を悩ます化学的品質異常[クリックで拡大]出所:東海大学

 非破壊検査の手段としては、さまざまな分野で超音波検査が使われているが、冷凍マグロに代表される冷凍物においては音波の減衰が大きく、一般的な超音波機器を使った検査が困難となっていた。そこで、まず冷凍マグロの検査に最適な超音波の周波数帯を検証し、機械学習によって超音波波形から鮮度不良が判別可能かを確かめた。

デモンストレーション
会見で行われたデモンストレーションの模様[クリックで拡大]出所:富士通
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