住友ゴムの白河工場が目指す水素の地産地消モデルとは:工場ニュース(3/3 ページ)
住友ゴム工業は、福島県白河市の白河工場で、水素エネルギーを活用したタイヤ製造に成功した他、水素の地産地消モデルの構築を進めている。
水素ボイラーや水素トレーラーを披露
見学会では白河工場に設置した水素ボイラーや水素トレーラー、水素受け入れ施設、NEO-T01を披露した。水素ボイラーは多管式貫流ボイラーで、水素トレーラーで運ばれてきた高圧力の水素が2段階に分けて減圧され投入される。その後、水素を燃焼し、熱エネルギーをNEO-T01の加硫工程に供給する。水素の燃焼で発生するのは水蒸気だけなので環境に優しい。
水素トレーラーは1台で21本の水素ボンベを運搬しており、これらにより、AZENIS FK520を生産するNEO-T01の加硫工程で1日に使用する熱エネルギーを創出できるという。トレーラーの車体には同社の新入社員から公募したキャッチフレーズ「水素の力ではずむ未来へ」「〜水素の力で、白河工場から新たな世界を切り拓こう!〜」をラッピングしている。
敷地内には水素トレーラーを駐車する水素受け入れ施設があり、建物内には水素ボンベの水素を水素ボイラーに供給する設備や水素漏れを検知するセンサーを設置した。建屋は可燃性の水素が充満しないように複数の開口部を設けており最大で4台の水素トレーラーが駐車可能だ。
NEO-T01は「メタルコア工法」「全自動連結コントロール」「高剛性構造」といった3つのキー技術を柱とした製造システムで2012年に完成し、白河工場に導入された。
メタルコア工法は、実際のタイヤサイズで作られたタイヤ内側の形状をした金属の成形フォーマー「メタルコア」を製造ラインで移動させつつ、「ビード」「カーカス」「ブレーカー」「トレッド」といったタイヤ部材を順に貼り付け、生タイヤに仕上げる。続いて、生タイヤに加硫を行い化学反応を起こさせ強靱な弾性と安定した耐熱性を持たせる。
全自動連結コントロールでは、タイヤのストリップ部材の生成/加工から、メタルコアへの貼り付けまでの工程を100分の1mm単位のコンピュータ制御システムによってコントロールすることで、それぞれの部材で最適な重量を割り付けることを可能とし、大幅な軽量化を実現している。
高剛性構造では、設計通りのサイズや形状のメタルコアで成形から加硫までの工程を終えるため、これまで使えなかった強靭な素材を補強部材に採用。これにより高速走行時の形状変化を大幅に抑えることに成功した。
これら3つのキー技術を採用したNEO-T01から生み出されたタイヤは、従来システム「太陽」と比較して、「高速ユニフォミティ(タイヤの均一性の整備)」の時間を70%減らし、10%の軽量化を達成して、高速走行時の形状変化を50%抑えた。また、太陽と比べ、サイズが10分の1のコンパクトな設備で運用できる。
白河工場の概要
白河工場は、1974年8月に操業を開始した住友ゴム工業のマザー工場で、敷地面積は60万600m2。従業員数は1610人で、生産品目は各種自動車用タイヤ、生産能力は月産約1万350t(トン)。
白河工場で生産している代表的なタイヤとしては、DUNLOPブランドの新車用タイヤ「SP SPORT MAXX050」「SP SPORT MAXX050」、乗用車用市販タイヤ「VEURO VE304」「WINTER MAXX 03」、トラック/バス用市販タイヤ「SP680」「エネセーブ SP688 Ace」、FALKENの新車用タイヤ「AZENIS FK510 SUV」「ZIEX ZE914E」、乗用車用市販タイヤ「「AZENIS FK520L」」「WILDPEAK A/T3W」がある。
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