「人材がいない」を言い訳にしない、工場DXの“とっかかり”を作るFS協会の3年間:スマートファクトリー(2/2 ページ)
「工場にデジタルの眼を」をキャッチフレーズに2020年4月に設立されたファクトリーサイエンティスト協会は、設立3周年の年次活動報告会を開催した。同協会の3年間の軌跡と新たな取り組みについて紹介する。
2023年3月までに708人のファクトリーサイエンティストを養成
こうした考えから、設立前に試験的に、2019年夏に慶應義塾大学SFCで5日間の合宿を実施。約20人が参加し「そこで手応えをつかんだことから2020年に強化とした」と大坪氏は当時を振り返る。2020年から本格的に活動を開始し、着実に会員数は増加。2022年度末(2023年3月期)には、会員数は321にまで達している。また講座回数も2022年度は10回まで増えており受講人数は294人となっている。
大坪氏は「われわれは受講者を『ファクトリーサイエンティスト』として認定しているが、2023年3月17日現在で708人のファクトリーサイエンティストを養成することができた。ただ、目指しているのは、2030年に累計4万人のファクトリーサイエンティストを生み出し、全国の工場の5つ当たりに1人以上がいる形とし、共通の土壌で話ができるような環境を生み出していくことだ。そのためにはもっと拡大のペースを上げていかなければならない」と語る。
産業用ロボットや工作機械、AIなど専門的な講座も充実へ
2022年度の活動としては、IoTの基本的な仕組みを学び、実際に簡単な一連の見える化システムを構築する基本講座に加え、専門領域に特化した講座を増やしたことが特徴だ。4月にはデンソーウェーブやベッコフオートメーションと共同で「ファクトリーサイエンティスト産業用ロボット技術者養成講座」を実施した。さらに、8月にはヤマザキマザックとの協力で「ファクトリーサイエンティスト工作機械活用講座」を行った。12月にはエイシングとの協力で製造業向けAI活用講座を行い、講座のバリエーションを広げた。
大坪氏は「われわれが目指しているのは、世界最大のSmall IoTの情報ハブだ。手の届くIoTの事例が現在でも708ある。4万人のファクトリーサイエンティストを本当に育成できると、問題を解決する切り口がそれだけ集まってくるということになる。そうなると共通課題の最適解をファクトリーサイエンティスト協会の中で導き出せるようになる。IoTはツールであり隠すものではないと考えている。共有化したIoTをさまざまな形で活用することで、それぞれのモノづくりが強くなっていくようにしたい」と今後の取り組みについて語っている。
第1回ファクトリーサイエンティスト賞も発表
活動報告会では、新設した「ファクトリーサイエンティスト賞」の表彰も行った。「育成賞」は、のべで30人の講座修了者を送り出したヤマザキマザックが受賞。ヤマザキマザック内で実際に修了者により現場で課題解決につなげることができたケースなどを紹介した。「実践賞」は、東邦インターナショナルが受賞した。東邦インターナショナルは、ワイヤやケーブル関連設備中心の貿易専門商社だが、取引のあるワイヤ/ケーブル業界の中小企業向けのIoTプラットフォーム「KETTEi」を立ち上げ新たに展開を開始し、新たなビジネスモデル構築が評価を受けた。「貢献賞」はモノワイヤレスが受賞した。
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