「人材がいない」を言い訳にしない、工場DXの“とっかかり”を作るFS協会の3年間:スマートファクトリー(1/2 ページ)
「工場にデジタルの眼を」をキャッチフレーズに2020年4月に設立されたファクトリーサイエンティスト協会は、設立3周年の年次活動報告会を開催した。同協会の3年間の軌跡と新たな取り組みについて紹介する。
スマートファクトリー化や工場DX(デジタルトランスフォーメーション)を進める中で、多くの製造業が課題として訴えているのが人材の問題だ。スマートファクトリー化には工場でのモノづくりの知見と、先進デジタル技術の知見の両方が必要となるからだ。これらを満たす人材を中堅以下の製造業では確保するのが難しく、それが「思ったように進められない理由」とされてきた。こうした課題に正面から立ち向かうために設立されたのがファクトリーサイエンティスト協会である。
2023年3月17日に設立3周年の年次活動報告会を開催したファクトリーサイエンティスト協会の3年間の軌跡と新たな取り組みについて紹介する。
必要とする人が自ら作れるIoTを
ファクトリーサイエンティスト協会は工場でIoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)を使いこなす人材を生み出すために2020年4月に設立された協会である。由紀精密/由紀ホールディング 代表取締役の大坪正人氏が代表理事を務め、専務理事はタケム研 代表取締役社長の武村真郷氏が務めている。その他の理事には、AI・IoT普及推進協会 会長で日本IT団体連盟監事の播磨崇氏、慶應義塾大学 環境情報学部 准教授の植原啓介氏、ベッコフオートメーション 代表取締役社長の川野俊充氏、慶應義塾大学 環境情報学部教授でSFC研究所 ソーシャル・ファブリケーション・ラボの田中浩也氏、きづきアーキテクト 代表取締役の長島聡氏、石川県副知事でデジタル化推進責任者の西垣淳子氏、東京ガス 参事の糟谷敏秀氏が参加するなど産官学から多彩な識者が参加して運営を担っている。
ファクトリーサイエンティスト協会を設立し活動を開始したその背景として大坪氏は当時の工場でのIoT活用の課題について挙げる。「デジタルと製造の融合が進む中で製造業ではなかなかIoT活用などが進まない状況が生まれていた。その要因として、現場の作業者と経営者のやりたいことがずれているということ、見える化はできても生産性が上がらないということ、高い導入費用に対してコストパフォーマンスが出せないということの3つがあると考えた」(大坪氏)。
これらの課題を解決するためにはさまざまなアプローチがあるが、ファクトリーサイエンティスト協会では「現場が自分たちで全てやってしまえるようにするためにはどうするかというアプローチで考えた」と大坪氏は述べる。そこで、プログラミングをしたことがない人でもIoTの一連の体験ができるカリキュラムを構築し「必要とする人が自ら作れるIoT(Small IoT)」の実現を目指している。「現場のことは現場の人が一番よく知っている。現場の担当者はデジタル技術の知見がないものの、一度コツがつかめれば自らの手で使いこなしていける。そのきっかけを作ることを考えた」と大坪氏は述べている。
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