リチウム金属電池の実用化へ、ソフトバンクがHAPS搭載に向け成層圏実験に成功:組み込み開発ニュース(2/2 ページ)
ソフトバンクは、先端技術研究所の技術展「ギジュツノチカラ ADVANCED TECH SHOW 2023」において、空飛ぶ基地局「HAPS」向けに開発を進めているリチウム金属電池を披露した。
樹脂箔で質量エネルギー密度を10%向上、全固体電池でも手応え
リチウム金属電池は質量エネルギー密度が400〜500Wh/kgの次世代電池に当たるが、ソフトバンクでは600〜1000Wh/kgの次々世代電池の技術開発も進めている。展示では、リチウム金属電池のさらなる質量エネルギー密度の向上に資する次世代樹脂箔を展示した。
リチウム金属電池の材料ごとの重量比率では、銅箔を用いる銅集電体が15%を占めている。この銅集電体を、重量が銅箔の4分の1となる、樹脂フィルムの表面を銅膜で覆った樹脂箔で製造できれば質量エネルギー密度を10%向上することが可能だ。ただし、樹脂箔は集電体への溶接が難しく、電池セルの歩留まりが大幅に低下することが課題になっていたが、ソフトバンクはさまざまな工夫を重ねることで溶接が行える技術を開発したとする。2023年2月には、産業技術総合研究所、三洋化成、日本ケミコン、ORLIBと共同で、防衛装備庁の制度を利用した研究開発を開始している。
全固体電池では、日本特殊陶業が開発中の酸化物型固体電池にリチウム金属負極を組み合わせる研究開発を進めている。全固体電池の開発課題の一つに界面制御があるが、正極活物質に硫化物系などの固体電解質をコーティングすることで特性を向上できる効果などを見いだしている。
そして次世代樹脂箔や全固体電池の先にあるのが、2018年4月にNIMS(物質・材料研究機構)との共同開発を進めているリチウム空気電池である。「現在も、次世代電池の将来形としてNIMSとの共同開発を着実に進めている」(同説明員)という。
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