140%以上の発電出力を達成した新たなORC発電システム、ラズパイで稼働状況も可視化:イノベーションのレシピ(2/2 ページ)
馬渕工業所、東京大学生産技術研究所、宮城県産業技術総合センターは、廃熱を使った有機ランキンサイクル(ORC)発電システムを用いて、優れた発電出力と国内最高レベルの省エネ化を両立した「独立型ORC発電システム(5kW級)」を開発した。
ラズパイで稼働状況を確認可能
関連技術として、小型ボードコンピュータの「Raspberry Pi(ラズベリーパイ)」を介し、独立型ORC発電システムの運転や発電、温度、流量の状況を、Webブラウザでモニタリング可能な「ラズパイ見える化システム」も開発した。ラズパイ見える化システムは、ラズベリーパイ、HUB、SIMを備えたWi-Fiルーターで構成され、さまざまな処理で、独立型ORC発電システムの運転や発電、温度、流量の状況を可視化したグラフを見られる。
独立型ORC発電システムの開発経緯
馬渕工業所 代表取締役の小野寿光氏は、「東日本大震災以降、地熱や温泉熱、産業系廃熱などの未利用廃熱を活用した有機ランキンサイクル発電システムが注目されているため、未利用廃熱の活用策は潜在需要が大きい。しかし、5kW級の小型ORC発電システムでは、発電した電気の品質条件が厳しく、発電事業者側でこれに対応する必要があることから、コスト増の一因となっている。このため低コストで高効率な独立型ORC発電システムの開発が求められていた」と説明した。
こういった状況を考慮して、NEDOの戦略的省エネルギー技術革新プログラムで、馬渕工業所、東京大学生産技術研究所、宮城県産業技術総合センターは、2020年度に「スクロール方式による高速・高出力膨張機を搭載した低価格ORC発電システムの開発」をスタートした。
この取り組みで、馬渕工業所は、ボイラーを熱源とした高効率小型バイナリー発電システム(5kW級)の開発を行い、80℃の廃温水の利用を想定した運転を実施し、発電機の回転数が1分間当たり3600回転で4.5kWの発電出力を確かめた。
従来のORC発電システムでは4k〜5kWの発電出力を達成するのに必要な熱量が100k〜125kWであったのに対し、開発品では60k〜75kWで済むため、40k〜50kWの省エネ化を成功したことになる。
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