140%以上の発電出力を達成した新たなORC発電システム、ラズパイで稼働状況も可視化:イノベーションのレシピ(1/2 ページ)
馬渕工業所、東京大学生産技術研究所、宮城県産業技術総合センターは、廃熱を使った有機ランキンサイクル(ORC)発電システムを用いて、優れた発電出力と国内最高レベルの省エネ化を両立した「独立型ORC発電システム(5kW級)」を開発した。
新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)は2023年3月6日、オンラインで記者会見を開き、主催する「戦略的省エネルギー技術革新プログラム」で、馬渕工業所、東京大学生産技術研究所、宮城県産業技術総合センターが、廃熱を使った有機ランキンサイクル(ORC)発電システムを用いて、優れた発電出力と国内最高レベルの省エネ化を両立した「独立型ORC発電システム(5kW級)」を開発したと発表した。
今後は、国内プラントの70%が200℃未満の排ガスを扱うことを踏まえて、今回のシステムが対応するこういったプラントを扱う廃棄物処理会社や化学系製造会社、食品系製造会社をターゲットにシステムを展開する予定だ。
火力発電の技術を応用
独立型ORC発電システムは、温度が80℃以上の廃温水で、継続して4.5kWの安定した発電出力を達成している。馬渕工業所 環境事業部 本村幹男氏は「本開発は、キーワードとして『少ない廃温水で発電可能な小型機』『発電電力の地産地消・多様な供給』『自家発電・蓄電による自立運転』を掲げて行った」と話す。
続けて、「特徴は、水が沸騰した水蒸気の力を回転エネルギーに変換する火力発電の技術を応用している点だ。火力発電の作動媒体は水で100℃以上の水蒸気の力で発電しているが、独立型ORC発電システムでは、100℃未満で蒸気になる水以外の有機媒体を活用している」と語った。
この有機媒体を使える高効率の膨張機を備えた小型バイナリー発電機の開発にも成功しているという。膨張機は容積型のスクロール方式を採用することで、廃温水を熱源として作動媒体を膨張させ、その力で発電機を回す。小型バイナリー発電機は、設計上80℃以上の廃温水温度で安定的な発電が行える。
加えて、発電出力をリチウムイオン電池(LIB)に蓄電するためのAC/DC変換器を新たに開発したことで、工場などから排出される廃熱で発電した交流の電力を直流に変換してバッテリーに蓄電できる。この技術の実用化と社会実装を進めることによって、地域社会におけるエネルギー供給のバックアップ体制を強化可能だという。
発電システムのフィールド試験の一環として、馬渕工業所は、鈴木工業の産業廃棄物処理施設「エコミュージアム21(仙台市宮城野区)」で、産業廃棄物処理用焼却炉の廃熱冷却水を熱源に活用した実地運転を行った。
実地運転では、温度帯が想定値よりも低い50〜60℃の廃温水で熱交換を行い、スクロール方式膨張機で作動媒体を膨張させ、その力で独立型ORC発電システムを運用した結果、1.5kW程度の発電に成功した。
従来のORC発電システムの発電実績と比べて、独立型ORC発電システムは、50〜60℃の温度帯で140%以上の発電出力も達成している。必要熱量が20k〜30kWであることも確かめ、発電機を稼働させるスクロール式膨張機の効率化としては国内最高レベルだということも分かった。
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