ヒッグス粒子の精密測定に貢献へ、HL-LHC実験向けPDアレイの量産を開始:FAニュース
浜松ホトニクスは、高エネルギー物理学用途のPDアレイ「8インチピクセルアレイディテクタ」を開発した。HL-LHC実験で求められる高放射線耐性と大面積化に対応し、ヒッグス粒子の精密測定などへの貢献が期待される。
浜松ホトニクスは2023年2月14日、高エネルギー物理学用途のフォトダイオード(PD)アレイ「8インチピクセルアレイディテクタ」を発表した。HL-LHC(高輝度大型ハドロン衝突型加速器)実験向けに、同月27日から本格供給を開始した。
8インチピクセルアレイディテクタは、HL-LHC実験におけるCMS実験装置向けに開発し、量産体制を確立。同実験で求められる高放射線耐性と大面積化に対応しており、ヒッグス粒子の精密測定やダークマター探索などへの貢献が期待される。
CERN(欧州原子核研究機構)では、ヒッグス粒子の精密測定や未知の物質であるダークマターの探索などに向け、HL-LHC実験の準備を進めている。衝突頻度を高めることでより多くのデータを得ることができ、エネルギーを測定するためのPDアレイに高い放射線耐性が要求される。
ガンマ線や電子などの放射線エネルギーを測定するPDアレイは、放射線が入射すると感度が低下する特性があり、高電圧をかけることで感度の低下を抑えられるが、破損の原因にもなる課題があった。そのため、高放射線耐性を備えながら、800Vの高電圧をかけても動作することに加え、大面積化への対応が求められていた。
同社は、これまで培ってきた光半導体素子の製造技術を応用し、ウエハー上に形成する膜の厚さや不純物の濃度などの均一性を高め、専用の検査装置を新たに立ち上げることで、同製品の量産体制を確立。2025年の夏ごろまでに、CERNに2万7000個を完納する計画で、高エネルギー物理学の新たな研究に貢献する。
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