画像再構成処理を必要としない、高精度な医療用イメージング技術を開発:医療機器ニュース
浜松ホトニクスは、画像再構成処理を必要とせずに一対の検出器でデータを取得する、高精度の医療用イメージング技術を開発した。従来の放射線検査装置と同等以上の精度を持ちながら、シンプルかつ小型の放射線検査装置の開発が期待される。
浜松ホトニクスは2021年10月21日、画像再構成処理を必要とせずに一対の検出器でデータを取得する、高精度の医療用イメージング技術を開発したと発表した。従来の放射線検査装置と同等以上の精度を持ちながら、シンプルかつ小型の放射線検査装置の開発が期待される。カリフォルニア大学、福井大学、北里大学との共同研究による成果だ。
PET(陽電子放射断層撮影)装置は、がん細胞に集積したPET薬剤が放出する放射線を蛍光体でシンチレーション光に変換して放射線を検出している。現在の装置は放射線の位置に約3cmの誤差が出るため、リング状に配置した検出器でさまざまな角度から放射線データを取得し、それらを再構成することで誤差を0.4cmまで抑えている。
今回開発した技術は、放射線が蛍光体と反応する際に発生するシンチレーション光よりも、放射線に対する応答速度が速いチェレンコフ光を利用。チェレンコフ光は電気を帯びた粒子が物質中の光の速さより早く通過する時に発する光で、時間分解能は高いが発光量が少ないという問題があった。
その問題を解決するため、同社が開発したマイクロチャンネルプレート内蔵光電子増倍管(MCP-PMT)に、放射線をチェレンコフ光に変換するチェレンコフ輻射体を内蔵して感度を高めた。新たにAI(人工知能)を用いた信号処理手法も開発し、約30psの時間分解能を可能にした。
この成果を応用することで、PET装置やCT(コンピュータ断層撮影)装置などの放射線検査装置のように大量のデータ取得の必要がなくなり、病変を迅速に診断できる。検査時間が短縮できれば、検査による被ばく量の軽減にもつながるとしている。
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