100kg可搬のAMRが変えるピッキング作業、必要台数はシミュレーションで正確試算:無人搬送車
GROUNDは可搬重量を100kgまで高めたピッキング作業向けAMR(自律走行ロボット)「PEER 100」と、必要なAMRの台数や作業者数などを算出する「PEERシミュレーター」を使ったデモンストレーションを同社のR&Dセンターで披露した。
GROUNDは2023年1月27日、可搬重量を100kgまで高めたピッキング作業向けAMR(自律走行ロボット)「PEER 100」と、必要なAMRの台数や作業者数などを算出する「PEERシミュレーター」を使ったデモンストレーションを同社のR&Dセンター(千葉県市川市)で披露した。
GROUNDは倉庫実行システムやロボットなどを活用した物流ソリューションを提供する2015年設立の企業だ。AI(人工知能)を用いた物流施設統合管理システム「GWES」や、ピッキング支援ロボット「PEER ST」、RFID(ICタグ)の自動読み取り機能を実装した「PEER ST SpeeMa+」などのAMRを提供してきた。
ロボットはオーダーに基づき、複数台が同時に自律走行して商品の保管場所に向かう。オペレーターはロボットの停止位置に向かい、タブレット端末に表示された商品を保管場所から取り出し、ロボットに載せたコンテナに格納することでピッキングが完了する。2022年12月に発表されたPEER 100は、内部のモーターや筐体を大きくすることで、可搬重量を従来のシリーズに比べて2倍以上に高めることに成功し、重量物の搬送にも対応できるようになった。「市場の声を反映させ、筐体デザインを変更し、より効率を求める設計に落とし込んだ」(GROUNDの説明員)。
さらに、PEER 100の提供開始に伴って、「ピッキング作業支援と自動搬送モード切り替え」機能を拡充した。商品を出荷する際の「ピッキング作業支援」だけでなく、設定したルートを回る「自動搬送モード」を加えることでロボットの稼働率を向上させる。「出庫が終わってたまったコンテナを入庫のためトラックが停車するバースまで搬送させるなど、これまで人が行っていた作業をロボットが担うことができる。ピッキング作業が終わった後もロボットを活用することができる」(同説明員)。
新たにリリースしたPEERシミュレーターは、ユーザーの要望や環境に合わせ、PEERシリーズの最適な台数と必要な作業者数などを算出する機能となっている。これまでは導入時にPEERをユーザーの元に数台持ち込み、作業効率がどれくらい高まるかを実測していた。ただ、それでは実際に必要になる台数を持ち込むことはできず、PEERの台数に応じて必要な作業者の人数や作業時間がどのように変わるのかを正確に把握することができなかったという。
利用方法はまずPEERシミュレーターに倉庫の地図データをアップロードし、PEERの停止位置や渋滞時の待機場所、地図の縮尺などを設定する。地図のデータはExcel、PowerPoint、各種CADなどに対応する。PEERにはLiDAR(Light Detection And Ranging)が搭載されており、PEERに倉庫内を走行させ地図を作製することもできる。その上でパラメーターとして、PEERや作業者の移動速度、ピッキング時間などを指定する。作業者の移動速度は年齢に応じた参考値が表示される。
デモンストレーションではPEERを8〜10台、作業者は3〜4人、1日のオーダー数を200とした時に、PEERの台数と作業者数の組み合わせに基づく作業時間、ロボットや作業者の移動距離をシミュレーションした。PEERが既に稼働している物流施設で、PEERシミュレーションを試してみたところ、実際のデータと3%程の違いしかなかったという。
「日々、オーダー傾向は変わる中で、どれくらいの作業者、ロボットを使った方がいいのかも瞬時にシミュレーションできる。他にも、ピッキングの方法や物流施設のレイアウトを変えた時の作業生産性も試算できる」(同説明員)
また、GROUNDの物流施設統合管理システムであるGWESとPEERの連携も実現し、PEERの作業量や業務進捗を容易に可視化、分析、管理することが可能になった。GWESはWMS(倉庫管理システム)やWCS(倉庫制御システム)をつなぐ役割として昨今出てきたWES(倉庫実行システム)にあたる。「われわれは次世代型物流施設であるハイパーウェアハウスや次世代型物流システムの構築を目指している。GWESはそのコアのOSにあたるシステムになる」(同説明員)。
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