e-Mobility Powerの「1つのカードでどこでもEV充電」に、エネチェンジが参加:電動化
e-Mobility PowerとエネチェンジはEV用充電インフラの整備や利便性向上などに長期的に取り組むための業務提携を結んだ。
e-Mobility Powerとエネチェンジは2023年2月9日、EV(電気自動車)用充電インフラの整備や利便性向上などに長期的に取り組むための業務提携を結んだと発表した。
この一環で、エネチェンジが設置している普通充電器がe-Mobility Powerの充電ネットワークに接続する。これにより、自動車メーカーなどが発行している充電カードでエネチェンジが設置した約1000基の普通充電器を2023年4月から利用できるようになる。また、設置から8年が経過した普通充電器のリプレースの提案も両社で推進し、既存の普通充電器よりも高出力な6kWの普通充電器を普及させていく。
普通充電器の普及に取り組むエネチェンジと、急速充電器に注力するe-Mobility Powerが協力することで、自宅などでの「基礎充電」、目的地までの途中での「経路充電」、目的地での滞在時間を利用した「目的地充電」までをカバーし、EVユーザーの充電の利便性を向上させる。
ユーザーの利便性を優先
エネチェンジは、EV向けに充電器を設置したい施設が初期投資ゼロで普通充電器を設置できるサービスを提供している。政府の補助金を活用する他、エネチェンジが設置費用を負担することによって初期投資を軽減する。出力6kWの普通充電器のみを取り扱っており、2023年半ばまでに累計で3000基を受注する目標だ。既に2022年末までに2475基を受注しており、現在約1000基が稼働している。
エネチェンジのユーザーは専用アプリを通じて充電器を使う際の認証を行い、利用した分の料金のみを支払う。月々の会費などは発生しないが、エネチェンジの普通充電器を利用するには専用アプリが必須となっていた。ただ、EVユーザーの多くは自動車メーカーなどが発行したe-Mobility Powerの充電ネットワークに対応した充電カードを持っている。この充電カードでエネチェンジの普通充電器も利用できる方がユーザーの利便性につながるとエネチェンジは判断し、充電カードの利用範囲拡大での協力に至った。
e-Mobility Power 代表取締役社長の四ツ柳尚子氏は「充電器設置者が独自の認証、決済をやり始めると、ユーザーにとっては充電に使用するアプリがどんどん増え、その全てにクレジットカードを登録する手間が発生する。これまで、日本は1枚のカードでどこでも手軽に充電できるインフラを作ってきた。手段がバラバラで使いにくいという声を踏まえて、1枚のカードでどこでも、ということにこだわってきた。それをこれからバラバラにしてはいけないという危機感もあり、普通充電器の独自決済が進む前に協力しておきたかった」と述べた。
エネチェンジとe-Mobility Powerは、充電カードの会員IDを基に充電カードでエネチェンジの普通充電器がどのように利用されているか動向を分析する。急速充電器と普通充電器のバランスや、過不足のない設備投資の在り方を検証していく。充電カードの会員の個人情報は従来と同様に自動車メーカーが扱い、エネチェンジやe-Mobility Powerで個人情報のやりとりは行わない。
急速充電だけでなく普通充電も不足
日本政府は、2030年にEV用充電器を15万基整備する目標だ。このうち3万基が急速充電、12万基が普通充電となる。e-Mobility Powerの充電ネットワークに接続している充電器の数は、急速充電が7800口、普通充電が1万2600口だ(2023年1月末時点)。
エネチェンジは、日本の充電インフラの課題として公共の普通充電器の設置数が海外と比べて少ないことを挙げる(急速充電器の設置数はフランスやドイツ、米国と同等)。また、既設の普通充電器は出力3kWがほとんどで、より高出力な6kWの普通充電器の普及が必要だと訴える。
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