サーボモーターの保全基準が“時間”から“状態”へ、オムロンの保全DXに新製品:FAニュース
オムロンは生産設備の異常の有無を見える化する「状態監視機器」の新シリーズとして、アドバンスドモーター状態監視機器「K7DD」を2023年3月1日より日本国内で販売すると発表した。4月から順次グローバルに向けて販売する。
オムロンは2023年2月1日、生産設備の異常の有無を見える化する「状態監視機器」の新シリーズとして、アドバンスドモーター状態監視機器「K7DD」を同年3月1日より日本国内で販売すると発表した。4月から順次グローバルに向けて販売する。価格はオープンとなっている。
50msごとに特徴量を演算、400種類以上の特徴量を連続処理
オムロンではこれまで同社のセンシング技術と異常検出アルゴリズムをすり合わせ、製造現場の停止ロスをなくすための「状態監視機器」をリリースしてきた。三相誘導モーターの状態を数値化するモーター状態監視機器「K6CM」および交換時期や出力電圧、電流、ピーク電流などの情報を本体のモニターで確認できるスイッチングパワーサプライ「S8VK-X」を2017年に発売したのを皮切りに、2019年に制御盤内の温度異常をチェックする状態監視機器「K6PM-TH」、2020年に絶縁不良が検出可能な絶縁抵抗監視機器「K7GE」、2022年には金属ヒーターの劣化傾向を監視するヒーター状態監視機器「K7TM」を発表した。
サーボモーターや誘導モーターは自動車や半導体などの製造工程において、材料の加工、搬送、攪拌などの工程で多く使用されている。頻繁に変速するモーター設備は機械的な劣化が激しく、突発的な設備停止や異常動作で生産が止まることで生産性が大きく低下するため多くの保全工数がかかっている。一方で、点検にはノウハウが必要で人によって基準がばらつくケースがある他、モーター設備の劣化に伴い品質不良が発生すると、市場流出を防ぐために前後工程の多くの製品を廃棄せざるを得ない。また、これらの問題を防ぐために、高頻度の定期保全を実施して工数や部品コストがかさんでいる。
オムロンの調べでは、保全現場の人員の8割が事後保全、予防保全を実施しているという。「時間を基準にした保全から、状態を基準にした予兆保全に変え、ロスを最小化するニーズが高まっている」(オムロン)。
新たに販売するK7DDはサーボモーターや負荷変動の激しいモーターの状態監視が可能となる。約9cm四方のK7DDを、制御盤の中に取り付けて電流と電圧をセンシングすることで、モーター設備全体を監視する。50msごとに特徴量を演算することが可能で、サーボモーターなどの動きに追随できる上、400種類以上の特徴量を連続して処理することができるため多様な故障モードに対応する。
例えば、ワークを加工方向に沿って移動させるXYテーブルなどの搬送装置では、K7DDが動作に合わせてデータをフィルタリングすることで、安定したデータを得ることができる。それに伴って適切なデータのトレンドを把握でき、保全アクションをサポートする。また、工作機械の主軸モーターは「刃具の摩耗」だけでなく、「切粉のかみ込み」や「ベアリング劣化」などさまざまな故障が発生し、それぞれに対して点検を実施しなければならないが、K7DD-PQでは事前に設定を行うことで故障モードを個別に監視できる。多様な特徴量を同時処理することで、モーター設備に生じた振動、衝撃、トルク変数などを適切に捉えて故障要因を特定する。
状態は正常なら緑色、注意が必要なら黄色、異常なら赤色に本体のLED表示やトランジスタ出力で確認できる。また、上位システムに接続して表示することも可能だ。電流と電圧をクランプ式の配線でセンシングするため後付けも容易で、振動センサーのように装置内部に工事をして取り付ける必要はない。異常判定条件の設定などに用いる専用のサポートツールを同時にリリースする。
オムロンではK7DDをもって監視ニーズを確認できた48装置の監視カバレッジを完遂したとするが、今後もシリーズ拡大の意向はあるという。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- オムロンが約10年ぶりのトップ交代、制御機器事業出身の新社長で次なる成長へ
オムロンは2023年1月12日、同社 執行役員常務 インダストリアルオートメーションビジネスカンパニー社長の辻永順太氏が同年4月1日付で社長 CEOに就任する人事を発表し、辻永氏、代表取締役社長 CEOの山田義仁氏、取締役会長 立石文雄氏が出席して本社(京都府京都市)およびオンラインで記者会見を行った。 - オムロン ロボット事業の現在地、ロボットとラインの統合制御は実践で価値証明へ
2015年に本格的にロボット事業に参入したオムロン。買収や提携などを経て、ライン制御とロボット制御を統合して行う「ロボット統合コントローラー」なども展開する中、現状をどのように捉え、今後はどのような方向性で進むのか。オムロン インダストリアルオートメーションビジネスカンパニー ロボット推進プロジェクト本部長の寺山昇志氏に話を聞いた。 - 「世界で最も現実的なインダストリー4.0」を目指すオムロンの勝算(後編)
オムロンはFA事業戦略を発表し、同社が考えるモノづくり革新のコンセプト「i-Automation」について紹介するとともに、これらのコンセプトを実践している同社草津工場の取り組みを紹介した。後編ではオムロン草津工場におけるIoT活用の実践の様子をお伝えする。 - オムロンが描く“現場”の力を最大化する自動化
オムロンは2018年8月28日、同社のモノづくり革新コンセプト「i-Automation(アイオートメーション)」への取り組みを紹介するととともに、そのモデル工場である京都府の綾部工場での自社実践の様子を紹介した。本稿では前編で「i-Automation」を中心としたオムロンのFA戦略の概要をまとめ、後編で自社実践を行う綾部工場での現場の取り組みをお伝えする。 - 設備保全の負荷を軽減、金属粉や油で起きる絶縁体劣化の遠隔監視機器
オムロンは2020年11月30日、製造現場の異常状態を人に代わって監視する絶縁抵抗監視機器「K7GE-MG」を同年12月1日に発売すると発表した。順次グローバル展開を進めていく計画だ。 - 停止影響の大きいヒーターの劣化傾向を数値で把握、オムロンが状態監視機器を発売
オムロンは2021年12月9日、車や半導体の生産プロセスで使用されるヒーター設備の劣化傾向を見える化し、予兆保全を可能とする状態監視機器「K7TM」を2022年4月1日からグローバルで販売すると発表した。