停止影響の大きいヒーターの劣化傾向を数値で把握、オムロンが状態監視機器を発売:FAニュース
オムロンは2021年12月9日、車や半導体の生産プロセスで使用されるヒーター設備の劣化傾向を見える化し、予兆保全を可能とする状態監視機器「K7TM」を2022年4月1日からグローバルで販売すると発表した。
オムロンは2021年12月9日、車や半導体の生産プロセスで使用されるヒーター設備の劣化傾向を見える化し、予兆保全を可能とする状態監視機器「K7TM」を2022年4月1日からグローバルで販売すると発表した。
製造現場における、設備の突発故障による生産停止や部品の廃棄ロス、保全員の緊急対応などは以前からの課題だが、労働人口減少やコロナ禍対応なども含めて、人手をかけずにこれらの監視を自動で行える仕組みが求められている。オムロンでは2017年12月から設備状態の監視を行う機器群を「状態監視機器」シリーズとして展開しているが、今回は新たにヒーター設備の監視を行う機器を用意した。
ヒーター設備は自動車業界において各種パーツを成形する射出成形機や半導体業界におけるウエハーの成膜装置やセラミック部品の焼成炉など、重要な工程で使用されている。ヒーターは経年劣化により内部の発熱線が細くなり断線し突発的に停止するケースがよく見られる。そのため抵抗値の監視をすれば、予兆保全は可能となるが、温度制御の方式により電圧や電流の波形がゆがむため、簡単に電圧値や電流値が求められない点や、ヒーターの温度特性による影響で劣化による変化か温度による変化か特定できないという課題があった。
オムロンが新たに投入する「K7TM」は、設備稼働中にヒーターの劣化傾向を常に監視し、数値で把握できるようにする機器だ。温度制御方法やヒーターの温度特性に依存せずに常時ヒーターの抵抗値を見える化できるようにする他、ヒーターの抵抗値の変化率を数値化し劣化状態の見える化を実現する。「単純に電流値や電圧値を示すだけでなく、また、抵抗値をそのまま見えるようにするだけでなく、保全に使える情報をそのまま見えるようにしたことが特徴だ」(オムロン)としている。
取り付けの負担も小さく、現場の既存設備を変更することなく、後付けで使用することが可能だ。ヒーターの電圧とクランプ式電流センサーでヒーターの電流値を計測するだけで、ヒーターの劣化傾向の監視が可能になる。また、本体表示による現場での状態監視に加えて、タッチパネルやPLC、通信変換器を使用したネットワーク接続で、現場だけでなくリモート監視なども可能だとしている。これにより、ヒーターの劣化状況に応じた保全が行える他、人への依存を抑えた保全活動が行えるようになる。
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