リコーの新型複合機は「環境」を重視、「DX」で電子帳簿保存法への対応も充実:イノベーションのレシピ(2/2 ページ)
リコーは、ADFから複数の領収書などをスキャンした後、同社の「RICOH 証憑電子保存サービス」を用いることで、電子帳簿保存法の要件に沿った証憑データを専用クラウドに保存できるA3対応のフルカラー複合機を発売する。
名刺と紙文書のデータを注文書や見積書に使えるワケとは?
DXでは、これまで複合機のガラス面から1枚ずつ読み取っていた名刺や領収書といった小サイズの原稿、厚紙などを、ADF(Automatic Document Feeder、両面自動読み取り装置)から直接読み取れるようにした他、従来機と比較して、片面の読み取りページ数を30ページ増の毎分150ページとし、両面の読み取りページ数を60ページ増の毎分300ページとした。
上記の機能を活用し、複合機のADFから複数の領収書などをスキャンした後、同社の「RICOH 証憑電子保存サービス」を用いることで、電子帳簿保存法の要件に沿った証憑(しょうひょう)データを専用クラウドに保存でき、クラウド上で証憑データの検索も行えるようになる。加えて、複合機のADFでスキャンした領収書などのデータと同社の「RICOH 受領請求書サービス」を連携し、専用のシステムに取り込むことで、AI(人工知能)とOCR(光学文字認識)により電子帳簿保存法に必要な情報(取引日、取引先、取引金額)を抽出し、専用クラウドに格納できる。
こういった機能を使用することで、複合機でスキャンした証憑データを専用クラウドに残せ、過去の文書を探す手間を減らせるだけでなく、属人化し多重入力するケースが多かった経理業務の効率化が行える。
「複合機のADFでスキャンした名刺と紙文書のデータを当社のクラウドサービス『RICOH カンタン名刺電子化アプリ for PHONE APPLI PEOPLE』に取り込み、クラウド型の業務改善プラットフォーム『RICOH kintone plus』と連携することで、名刺や注文書、FAX文書のデータを専用クラウドに登録し、注文書、見積書、報告書の作成で使えるようになる。RICOH kintone plusでは、製造業、建設業、運輸業、流通業といった業種別のテンプレートを用意しており、各業種に適した注文書や見積書、報告書が作れる」(石井氏)。
また、省スペース設置に対応した複合機のインナー紙折りユニットを強化し、従来の「Z折り」「二つ折り」だけでなく、以前から要望が多かった「内三つ折り(重ね折り)」「外三つ折り(重ね折り)」に対応している。内三つ折りと外三つ折りを利用することで、書類の重ね折り作業を円滑にし、書類の封筒への封入作業を効率化できる。
針なしとじで書類の1カ所とじと2カ所とじにも応じ、針を使用せずに書類をまとめやすい。「当社の調べによれば、複合機を利用した針なしとじの利用率は、増加傾向にあり、2021年時点でアンケート対象者全体の24.3%が針なしとじを利用していることが分かっている。内訳では、全体の34%が学校/教育で、15%が医療/福祉業だと判明している」(石井氏)。
セキュリティについては、暗号化通信プロトコル「TLS1.3」や暗号化用アルゴリズムエンジンを備えたハードウェア「TPM2.0」、無線LANのためのセキュリティプロトコル「WPA3」などを備えている他、米国の国立標準技術研究所(NIST)が発行する情報保護向けのガイドライン「NIST SP800-171」にも準拠している。
リコーが2019年に提供を開始したアップデートサービス「RICOH Always Current Technology(リコーオールウェイズカーレントテクノロジー)」にも対応しており、複合機の導入後も、最新のセキュリティ機能や顧客の業務に合う機能を搭載できるようにしている。
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