フロート窯の内部を可視化するデジタルツイン、容易に扱え数時間で結果を出力:CAEニュース(2/2 ページ)
AGCはフロート窯におけるガラス溶解プロセスの状態を詳細に把握できるデジタルツインを開発した。
従来のフロート窯シミュレーションの課題とは?
AGC 先端基盤研究所 ホットプロセスチームの関大河氏は、「フロートガラスの製造プロセスでは、窯内温度が1600℃を超えるフロート窯にシリカ砂などの原料を投入し溶かす。溶かしたガラスは、フロートバスという工程で、板状のガラスに仕上げる。その後、徐冷工程と成型工程を経て、板ガラス製品となる。板ガラス製品では、気泡や異物をなくすために、フロート窯におけるガラスの溶解プロセスを適切に制御する必要がある他、製造コストや環境負荷も削減しなければならない。しかしながら、フロート窯の内部は1600度の高温であるため、内部の状況を把握することが難しい。解決策として、AGCでは、ガラス溶解プロセスのシミュレーション技術“CADTANK(キャドタンク)”を独自開発し、1970年から活用している」と話す。
加えて、「だが、CADTANKでは、製造部門が求めるスピード感で、タイムリーにシミュレーションを行うことが困難だった。理由は、CADTANKを利用するためには、高度な専門知識とスキルが必要だったからで、製造プロセスの技術者が扱えず、解析専任者に依頼し対応してもらっていた。また、CADTANKでシミュレーションを行うためには、フロート窯のデータなどが必須となるが、こういったデータは解析専任者が直接取得できず、製造プロセスの技術者がフロート窯のデータ取得と調査を行っていた。このようなやりとりの後に、解析専任者は、フロート窯の内部を再現するための試行錯誤を実施するため、信頼できるシミュレーション結果を獲得するまでに、数日から数週間までかかるケースもあった。要因は、シミュレーションに必要なデータの全てを入手できずに、幾つかの情報は推定しなければならなかったからだ。こういった一連のワークフロー後、シミュレーション結果を製造プロセス技術者に伝えるため、シミュレーション期間に1カ月かかっていた時もあった。ちなみに、解析専任者の数が限られており、フロート窯のシミュレーションに応じる人手も足りていなかった。そこで、当社はCOCOAを開発した」と補足した。
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