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AGC、素材開発のスピードアップに向けて専用アプリ不要の簡単AR技術の試験使用を開始VRニュース

AGCは、素材の組成開発を担う材料融合研究所と素材の生産プロセスおよび設備開発を担う生産技術部において、AR(拡張現実)/MR(複合現実)技術を保有するKAKUCHOの「webAR」の試験使用を開始すると発表した。

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 AGCは2019年11月27日、素材の組成開発を担う材料融合研究所と素材の生産プロセスおよび設備開発を担う生産技術部において、AR(拡張現実)/MR(複合現実)技術を持つスタートアップであるKAKUCHOの「webAR」の試験使用を開始すると発表した。開発現場での利用は同年12月からを予定し、AR技術により開発設備の導入を円滑に進め、素材開発のスピードアップを図りたい考えだ。

写真左からAGC 材料融合研究所 マネージャーの山内健氏、KAKUCHO COOの井倉北斗氏
写真左からAGC 材料融合研究所 マネージャーの山内健氏、KAKUCHO COOの井倉北斗氏(クリックで拡大)

 従来の素材開発は、組成開発、生産プロセス開発、設備開発といった開発フェーズから量産に至るまで数十年を要するケースもあり、例えば、液晶ディスプレイ用ガラスの開発では18年(1980〜1998年)もの歳月を費やしたという。AGCは、最終製品を開発するメーカーなどに対し、いち早く素材とソリューションを提供することをミッションに掲げており、開発期間の短縮や効率化が急務となっていた。

現在の素材開発のフローについて
現在の素材開発のフローについて 出典:AGC(クリックで拡大)

 そこで、AGCでは組成開発にAI(人工知能)/MI(マテリアルズインフォマティクス)を活用したり、設備開発においても3D CADや3Dプリンタを導入したりして効率化に取り組んできた。しかし、設備開発現場の現状を見てみると、同じ図面や仕様を共有しているにもかかわらず、組成(素材)開発者と設備開発者との間に認識のずれが生じ、設備開発に多大な時間を要するケースがあるという。

 AGCはこうした課題解決の手段の1つとして、AR技術に着目。今回、KAKUCHOの技術提供を受け、webARの試験使用を決定するに至った。

VRの欠点をARで補い、開発スピードを加速

 もともと、AGCでは先行してVR(仮想現実)を活用した設備開発の効率化にも取り組んでおり、バーチャルプロトタイピングを推進。社内コミュニケーションや会議での活用、マーケティングツールとしての利用、現場への設備導入の検証、そして、展示会のブース製作にもVR技術を適用し、意思決定や判断スピードの向上などに役立ててきた。

 「しかし、VRの利用には課題もある。1つはVR専用機器とオペレーターが必要な点。もう1つは開発対象(設備)の3Dモデルだけでなく、空間を含めたデータ(例えば、工場内部の点群データを用意するなど)を準備しなければならない点だ。こうした要因により、VRは気軽に利用することが難しく、データの準備に時間やコストがどうしてもかかってしまう。こうしたVR活用における不足点をAR技術で補うことで開発スピードをさらに加速させたいと考えた」と、AGC 材料融合研究所 マネージャーの山内健氏は、AR技術の活用に着目した背景を語る。

 今回、試験使用を開始するKAKUCHOのwebARは、専用アプリを開発することなく、スマートフォンやタブレット端末に搭載されるWebブラウザ上でARを簡単に使用できる技術。webARを導入し、KAKUCHOが発行するリンクを既存のWebサイトなどに埋め込むだけで使用可能で、URLからダイレクトに、あるいはそのURLのQRコードをスマートデバイスで読み取ることで、ARコンテンツを表示することが可能となる。

「webAR」について
「webAR」について 出典:KAKUCHO(クリックで拡大)

 KAKUCHO COOの井倉北斗氏は「webARはアプリ開発の手間、コスト、操作性といった、従来のAR技術の課題を解決するもので、アプリ開発費を0円に抑えられる。専用アプリがなく、Webブラウザで利用できるため、ユーザー自身も手軽に利用でき、企業負担も少なくて済む」と活用メリットを語る。

 AGCは自ら所有する3D CADデータ資産をwebAR向けに変換し、開発設備のARコンテンツを準備することで、これまで図面や仕様書だけでは正確に伝えることができなかった現場のレイアウトや作業性、安全性などの事前検証に役立て、的確なコミュニケーション、迅速な意思決定を促し、素材開発全体のスピードアップにつなげていくという。実際の使用イメージとしては、装置増設後のレイアウトや追加設備の使い勝手の検証などが考えられるとする。

装置増設後のレイアウト検証についてデモを披露した
装置増設後のレイアウト検証をイメージしたデモを披露(クリックで拡大)

 山内氏は「3Dモデリングは装置本体のみでよく、現場担当者自身がARコンテンツの製作者になれる。webARによってARの取り組みをAGC内で自己完結できるようになり、研究開発のスピードアップ、コストダウンが可能になるだろう」と、これからの活用に期待を寄せる。

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