リコーが苦手な新規事業育成を担うフューチャーズBUは「社会課題解決」を目指す:イノベーションのレシピ(2/2 ページ)
リコーが新規事業部門であるリコーフューチャーズBUの取り組み説明。社会課題解決をミッションとする8つの新規事業は、ただもうけることを主軸にはしていないという。
PLAと独自発泡技術を融合、電池交換レス&配線レスが可能なIoTセンサー
価値創出に用いる手段の2つ目は、リコーが1998年と早期から掲げてきた「環境経営」の進化を「製造業としての80年以上の歴史を使い倒して」(入佐氏)実現する「永続する地球をもの作りの力で」である。
PLAiR事業は、まさにこの「永続する地球をもの作りの力で」を象徴する事業といえる。「PLAiR」とは、植物由来で生分解性を持つ樹脂のPLA(ポリ乳酸)とリコー独自の発泡技術の組み合わせによって製造される微細で均一な発泡シートである。一般的な方法では難しいPLAの発泡を実現するとともに、発泡倍率は2〜25倍を達成している。現在は、嵌合蓋や耐熱トップシール、耐熱嵌合容器など食品容器としての採用を進めているところだ。入佐氏は「PLAiRも当社単独で事業を拡大できるとは考えていない。材料メーカーや加工メーカー、リサイクル業者、ブランドオーナーなどPLAiRに共感していただけるパートナーとの共創が重要だ」と強調する。
エネルギーハーベスト事業では、トナーなどの有機感光体技術を基に開発した固体型色素増感太陽電池と通信技術を組み合わせた、電池交換レス&配線レスが可能なIoT(モノのインターネット)センサーを展開している。
入佐氏は「IoTセンサーの活用機会は増加しているが、電源や配線に起因する設置制限が課題だ。また、EUのバッテリー規制改正案では一次電池の仕様を段階的に廃止する方針が示されている。当社のIoTセンサーはこれらの課題に対応できる」と述べる。既に、温度管理が重要なバナナの倉庫管理向けなどに採用されており、スマートビルにおけるZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)化などの用途でも提案していきたい考えだ。
価値創出に用いる3つ目の手段は、新しい事業の作り方として必要不可欠な「ベンチャーとの共創」になる。入佐氏は「リコーは新規事業の創出があまりうまくないといわれており、私自身も少なからずそう思うことがある。確かに、新規事業の創出はやはりベンチャーの方が優れているが、リコーのような大企業にもやれることがあるのではないか。イノベーション創出に向けて『ベンチャーとの共創』を推進していきたい」と意気込む。
再生医療に用いられるiPS細胞や、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のワクチン開発で広く知られるようになったmRNAなどが関わる、創薬開発や製造の支援を手掛けているバイオメディカル事業は、2018年に共同研究を開始し、2019年に出資、2022年に連結後会社化したバイオベンチャーのエリクサジェン・サイエンティフィック(Elixirgen Scientific)との取り組みが起点になっている。
リコーはさらにバイオメディカル事業を拡大すべく、2021年夏に神奈川県藤沢市にmRNAの製造受託施設を開設し、2022年9月には国内におけるmRNA医薬品創薬市場の活性化に向けた「リコー バイオメディカル スタートアップ ファンド」を設立している。「ファンド設立というのはリコーとしてもかなり踏み切った判断になると思う。リコー自身が医療に直接かかわることはないと思うが、mRNAをコアにバイオ創薬支援のトップブランドを目指したい」(入佐氏)としている。
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