リコーが2種の太陽電池を披露、IoTデバイスの自立型電源に:IoT&5Gソリューション展
リコーは、「第11回 IoT&5Gソリューション展 春」において、同社が開発した固体型色素増感太陽電池と、九州大学と共同開発したフレキシブル環境発電デバイスを披露した。IoTデバイスの普及を拡大させる自立型電源として提案を進める。
リコーは、「第11回 IoT&5Gソリューション展 春」(東京ビッグサイト、2022年4月6〜8日)において、同社が開発した固体型色素増感太陽電池と、九州大学と共同開発したフレキシブル環境発電デバイスを披露した。IoT(モノのインターネット)デバイスの普及を拡大させる自立型電源として提案を進める。
同社の固体型色素増感太陽電池は、室内照明のような微弱な光でも高い発電性能を発揮することを特徴としている。2020年2月に太陽電池モジュールの外販を開始した後、同年5月には応用製品となる環境センサーを発売。さらに、2021年5月には、固体型色素増感太陽電池の性能について、最大出力を従来比約20%向上し、−30℃までの低温環境下にも対応できるようにするなどの改良を施して、同年9月には環境センサーも性能向上した固体型色素増感太陽電池を搭載したラインアップに刷新している。
改良後の固体型色素増感太陽電池の最大出力は、昼白色LEDで200ルクス(一般的な住宅の室内の明るさに相当)、25℃の環境下、52×84mmサイズのモジュールで276μWとなっている。発電効率は6.3μW/cm2になる。
環境センサーは、固体型色素増感太陽電池で得た電力をセンサー内のリチウムイオン電池に蓄積して駆動する。測定項目は、温度、湿度、照度、気圧、内蔵リチウムイオン電池の電圧で、通信はBluetooth Low Energyを用いている。環境センサーと、Bluetooth機能を持つスマートフォンやタブレット端末などと直接つなぐこともできるが、Wi-Fiを搭載する専用の中継器を用いれば最大15台の環境センサーを管理できる。主な用途としては、工場や倉庫の温湿度管理、冷蔵庫、冷凍庫の温度管理、オフィス空間の温度管理などを挙げる。「一般的な環境センサーが電源に用いているコイン型電池は交換する必要がある。しかし、当社の環境センサーは、照明による明かりがあれば固体型色素増感太陽電池によって電力が得られるので交換の必要がない。また、−30℃でも動作可能なことで適用範囲を広げられると考えている」(リコーの説明員)という。
一方、フレキシブル環境発電デバイスは2022年度内の商品化を目指して開発中の技術である。薄型、軽量、フィルム形状の有機薄膜太陽電池(OPV)であり、屋内のような低照度(約200ルクス)から、屋外の日陰などの中照度(約1万ルクス)までの環境下で、光電変換効率11〜12%の高効率な発電を行える。
関連記事
- リコーが有機薄膜太陽電池を開発、室内から屋外の日陰まで幅広い照度で高効率発電
リコーは、九州大学と共同開発した、薄型かつ軽量でフィルム形状の有機薄膜太陽電池のサンプル提供を2021年9月に開始する。低照度の屋内や屋外の日陰など中照度の環境下まで高効率に発電できることが特徴。IoTセンサーを常時稼働させるためのフレキシブル環境発電デバイスとして自立型電源向けに展開する。 - 有機デバイスの耐久性を約35倍にまで向上、リコーが新コーディング技術を開発
リコーは2020年12月2日、有機物の構造を保ったまま、有機デバイスの耐久性を大きく高めるセラミックコーティング技術を開発したと発表。同技術を用いて開発した、「セラミック有機ハイブリッドデバイス」はセラミックコーティングを使っていない有機デバイスと比較して約35倍の耐久性を持つ。 - 電池レスで24時間365日測定可能、固体型色素増感太陽電池搭載の環境センサー
リコーは、固体型色素増感太陽電池を搭載した「RICOH EH 環境センサーD101」と、同センサーで取得したデータの管理システムを発売した。電池や配線がなくても、環境データを24時間365日測定できる。 - 東芝がフィルム型ペロブスカイト太陽電池で世界最高効率、新開発の成膜法で実現
東芝は、同社が開発を進めているフィルム型ペロブスカイト太陽電池について、新たな成膜法を開発することにより「世界最高」(同社)のエネルギー変換効率となる15.1%を実現した。2018年6月に実現した「世界最大」サイズとなる703cm2を維持しながら成膜プロセスの高速化と変換効率の向上に成功したという。 - 積水化学がペロブスカイト太陽電池を2025年に事業化へ、資源循環でも大きな進展
積水化学工業が、同社グループの製品・技術を通じた社会課題解決の取り組みについて説明。経営方針「Vision 2030」においてESG経営を中核に置く同社は、戦略的な環境取り組みとして資源循環と脱炭素の両立を重視しており、その中で重要な役割を果たすバイオリファイナリーやペロブスカイト太陽電池、CCU技術などの開発進捗状況を紹介した。 - ペロブスカイト太陽電池を搭載した、IoT CO2センサーデバイスを開発
マクニカとエネコートテクノロジーズは、ペロブスカイト太陽電池を使用したIoT CO2センサーデバイスを開発した。屋内の低照度環境下でも、太陽電池のみで駆動できる。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.