有機デバイスの耐久性を約35倍にまで向上、リコーが新コーディング技術を開発:組み込み開発ニュース
リコーは2020年12月2日、有機物の構造を保ったまま、有機デバイスの耐久性を大きく高めるセラミックコーティング技術を開発したと発表。同技術を用いて開発した、「セラミック有機ハイブリッドデバイス」はセラミックコーティングを使っていない有機デバイスと比較して約35倍の耐久性を持つ。
リコーは2020年12月2日、有機物の構造を保ったまま、有機デバイスの耐久性を大きく高められるセラミックコーティング技術を開発したと発表した。同技術を用いることで、セラミックコーティングを使っていない有機デバイスと比較すると約35倍の耐久性を持つ「セラミック有機ハイブリッドデバイス」の製造にも成功した。
従来困難だった有機デバイスへのセラミックコーティングを実現
有機ELディスプレイなどの有機デバイスは、有機分子の組み合わせ次第でさまざまな機能を発揮できる。ただ、無機デバイスと比較すると耐久性に課題があることが従来から指摘されていた。耐久性を向上させる手段としてはセラミックコーティングなどがある。しかし、一般的なセラミックコーティングの過程では、高熱で有機デバイス本体の表面を焼き固める(焼結)ことになるため、既存の製造技術では有機物の構造を維持することが困難だった。また、セラミック膜に透明性や導電性を持たせることが難しいという課題もあった。
こうした課題を解決するべくリコーが新たに開発したのが、エアロゾル状にしたセラミック粒子を噴射する「エアロゾルデポジッション法」を主軸とするセラミックコーティング技術だ。新技術では、微細な透明導電性セラミック粉体を常温かつ固体のまま有機デバイスの表面に衝突させることで、透明性や導電性を備え、かつ、均一な厚さを持つセラミック膜を形成する。これを実現する上では、セラミック粒子の組成やサイズなどの条件を適切に制御する技術が重要だが、リコーは同技術の開発に成功した。
セラミック粒子の噴射に先立って、独自開発した電荷輸送性中間層塗料を有機デバイス表面に塗布しておくことで、有機デバイスの機能保護やセラミック粉体の密着性向上、セラミック層の厚膜化も実現する。電荷輸送性中間層塗料と透明導電性セラミック粉体はその調合次第で、さまざまな有機デバイスに適用可能である。
また、これら一連の新技術を、リコー製複合機に使われている電子写真用感光体に適用できることも確認した。この結果完成した有機デバイスを、リコーはセラミック有機ハイブリッドデバイスと名付ける。同デバイスのスクラッチ試験を実施したところ、一般的な有機感光体の約35倍、高耐久樹脂膜を利用した感光体の約10倍の強度を持つことを確かめたという。これは「ダイヤモンドと同じ結晶構造を持ち、非常に高硬度のDLC(Diamond like Carbon)コーティングと同等以上の強度」(リコー)に相当する。直径100×長さ380mmの面積上で、均一な加工が行えることも確認した。
リコーは新技術について「当社グループが長年培った半導体材料技術と薄膜生産技術を生かしたもので、有機ELディスプレイや電子ペーパー、有機薄膜センサー、有機太陽電池などの有機デバイスにおける耐久性強化や低コスト化に貢献すると考えている。また、デバイス表面をセラミックコーティングで修繕することにより、有機デバイスのリサイクル使用促進にもつながると期待している」(プレスリリースより)とコメントしている。
今回開発した新技術とセラミック有機ハイブリッドデバイスは、オンライン展示会である「nano tech 2021 第20回 国際ナノテクノロジー総合展・技術会議」(2020年12月9〜11日まで開催)で展示する。
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