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DXや内製化など進めた施策が成果に、安川電機が語る2023年の見通しFAインタビュー(2/2 ページ)

世界経済に多くの影響を及ぼしたコロナ禍の影響が一段落しつつあるが、2023年はどのような動きを見せるのだろうか。安川電機 代表取締役社長の小笠原浩氏に2022年の振り返りと2023年の見通しについて話を聞いた。

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地政学的リスクを考え、内製化率を5割に引き上げ

MONOist 変化への対応という意味では、モノ不足や部材の高騰、為替の変化にも2022年は翻弄された1年だったといえます。今後もしばらく急な変化が続きそうですが、どう捉えていますか。

小笠原氏 モノ不足は落ち着いてきてはいるものの調達コストは高いままだ。社内の原価低減などで手は打っているものの、一部は価格転嫁せざるを得ないものもある。従来に比べて価格転嫁することへの抵抗感はなくなってきていることはありがたいが、価格転嫁が反映されるまでの間にもタイムラグがあり、全てを吸収することは難しく、一部の影響はどうしても残る。現在でも入手困難なものはやはり半導体だ。半導体はいまだに需要と供給のバランスが取れていない。2023年もある程度状況を見ながら確保していくことになるだろう。

 また、2022年後半は円安が大きなトピックとなったが、安川電機にとっては円安は基本的にはプラス影響をもたらす。一方で、円安で製造拠点の国内回帰の動きなども注目されたが、基本的には為替だけで拠点を動かすということは考えていない。生産拠点の基本的な考え方は、基幹部品については日本で生産し、その他は“地産地消”をベースとしている。需要地に近いところに生産拠点を作るというのが方針だ。

MONOist 製造拠点としては、福岡県行橋市の行橋事業所の強化にも取り組んでいます。

小笠原氏 これも為替環境が変わったからではなく、もともと議論してきたものがこのタイミングで進んだというものだ。行橋事業所ではインバーターなどを生産しているが、インバーターに使うプリント基板は従来、EMS(電子機器製造受託サービス)企業に8割以上委託し、内製化率が2割を切る状況になっていた。ただ、スマートフォン端末などに比べるとFA系のプリント基板は数が少ないため、それを専門とするEMS企業は少なく、また対応の柔軟性もなかった。委託生産の場所も中国が中心で、コロナ禍によるロックダウンや地政学的な問題などが発生する可能性もある。そこで、内製化率を5割まで引き上げることを目標にプリント基板の生産を行うことを目的として、新たな工場を建設することを決めた。行橋事業所の敷地内に新たなプリント基板工場を建築し2027年に稼働させる。

 この工場建設にはもう1つの狙いもある。プリント基板を作るのに必要な表面実装機には、安川電機のサーボモーターが多く使われている。これらを実際に使う場を作ることで、さらに自社製品の技術を高めることを狙いとしている。実際に自分たちの製品がどのように使われているかを自社内でフィードバックできるようになり、顧客に対する説得力なども高められる。自動化やスマート化などに必要なポイントなども分かるようになる。今回はプリント基板の内製化だが、同様の動きは他の領域にも広げていこうと考えている。プリント基板の他、射出成形機、ロボットマニピュレーターの機械加工については具体的に内製化を検討している。とにかく安川電機の製品が使われている製造機械については、それを使って内製化率を高めるということを進めていく。

i3-Mechatronicsを基軸にモノ売りとコト売りの両面を強化

MONOist ここ数年、ソリューションコンセプト「i3-Mechatronics」の浸透を進めるとともに、以前からの製品販売体制の強化の両面を進めることを強調していますが、それについてはどう考えていますか。

小笠原氏 i3-Mechatronicsについては、「integrated(統合的、システム化)」「intelligent(知能的、インテリジェント化)」「innovative(革新的、技術革新による進化)」などのコンセプトの浸透は進んでおり、「YRM-Xコントローラ」など、これらを具体化する製品群もそろってきた。こうした機器で実現するソリューションでしかできない価値の実現を進めていく一方で、従来のようにモノとしての製品で提供できる価値もバランスよく提供できるようにすることが重要だと考えている。

 そのために販売体制の強化も進めた。2018年に技術商社の末松九機を連結子会社化し、同じく技術商社の安川メカトリックとともに、それぞれ独立一体運営とし、相互連携を進めながらもそれぞれの販売ルートを生かしたモノ売りの強化を進めている。販路軸や製品軸でさまざまな工夫をしながらモノ売りの強化を進めていく。

 モノ売りを進めていくのに対してもi3-Mechatronicsは大きな意味がある。顧客の製品を理解し、より強化するのに必要なものをデータを通じて理解し、それを基に、安川電機のコンポーネントの強みを訴えることができるからだ。そういう意味でi3-Mechatronicsで描いたコンセプトを基軸とし、ソリューションによるコト売りとモノ売りの両方を強めていく。

MONOist 全体として2023年についてどのように見ていますか。

小笠原氏 急激に伸びたり、落ちたりはしない1年になると見ている。FAに関してだけを見ると受注残があるのでこれをどう処理するかが重要になる。在庫そのものはある程度は余ってくると見ているが、モノにもよるためそんなに大きな値崩れもないだろう。業種的には半導体製造や電気自動車(EV)製造での引き合いは高く、これらの領域が市場をけん引する。全体的には良い1年になるだろう。

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