現場の高精度データを活用へ、安川電機が制御とデータ利活用機能の高度化を推進:IIFES 2022
安川電機は、「IIFES 2022」で、ACサーボドライブ「Σ-X」や新コンセプトコントローラー「YRM-X」などの新たなハードウェア製品により、モーション制御の高度化を訴えるとともに、デモラインを通じ、これらの機器で取得できるさまざまなデータを活用する意義を訴えた。
安川電機は、「IIFES 2022」(リアル展、2022年1月26〜28日、東京ビッグサイト)で、ACサーボドライブ「Σ-X」や新コンセプトコントローラー「YRM-X」などの新たなハードウェア製品により、モーション制御の高度化を訴えるとともに、デモラインを通じ、これらの機器で取得できるさまざまなデータを活用する意義を訴えた。
モーション領域で数式を設定して結果を表示
安川電機は新たなモノづくりコンセプトとして、生産セルで生まれるデータを基軸に、これらを活用するシステムを実現したり、AI(人工知能)技術を活用して知能化したりすることで実現できる新たなモノづくりコンセプト「i3-Mechatronics」を掲げ、これらを実現する製品群の強化を図っている。
戦略製品の1つとして2021年3月に、ACサーボドライブ「Σ-X(シグマテン)」シリーズを販売した。「Σ-X」シリーズは高いモーション性能とデジタルデータを活用する機能に対応していることが特徴だ。
モーション性能については、サーボドライブの評価指標である速度応答周波数3.5kHzを達成し、装置の安定的な稼働に貢献する。また、サーボモーターの最高回転速度は7000min-1とし、装置の駆動速度を向上させた。分解能についても26bit(6700万パルス/回転)のエンコーダーを搭載し、停止精度を高めている。
一方、データ活用機能については、センサーネットワークである「Σ-LINK II」により、エンコーダー信号線に、各種センサーやI/O機器など機械側に設置される機器を接続可能とした。これにより、サーボドライブの制御情報と、センサーによる作業結果情報を同じタイムスタンプで収集できるようになり、改善や不具合検知などに活用しやすくしている。また、「Σ-X」そのものでも、さまざまなセンシング機能、環境・寿命モニタリング機能を強化しており、装置の変化を捉えて異常を検知できるという。
さらに、参考出品とした「Σ-X FT55」ではセンシングデータカスタマイズ機能をオプションで用意しており、「Σ-X」で得られたデータを基に、ユーザーが独自で計算式を設定し、計算結果のみを収集できる。安川電機 モーションコントロール事業部 ソリューション技術部 推進課 課長補佐の安井弘之氏は「現場データの活用を広げていけばどうしてもデータ量が増えてくる。効率的に活用するためにはある程度モーションの領域で結果を示し、その結果を活用する形にしてく必要がある。また、これらをユーザーが自分の手で行えることにより、いつでも必要なデータを活用できるようにする」と述べている。
制御ととともにセル情報を統合管理
さらに、2021年6月に製品化した「YRM-Xコントローラ」の価値もデモラインを通じて紹介した。「YRM-Xコントローラ」は、マシンコントローラーの役割に加えて、製造現場からのデータを活用できる形で高精度で効率的に集める役割を担えることが特徴だ。機器の制御を行いながらも、セルを構成するさまざまな装置のデータを、リアルタイムで時系列同期させた形で収集し、それを制御に反映させることができることが特徴だ。例えば、マシンコントローラーの一部を「YRM-Xコントローラ」に置き換えることで、セル全体の情報収集を行い、上位システムとの連携を行うような使い方が期待されている。
デモラインでは、「配膳」「加工」「研磨」「検査」の4つの工程を自動化しており、これらの4つの工程で用いられている制御情報を、この「YRM-Xコントローラ」を使用して統合。データの収集と解析を一括して行うソフトウェアツール「YASKAWA Cockpit」に送り込み、業務に応じた情報表示を行った。2021年までの展示会での「YRM-Xコントローラ」デモでは、情報収集機能のみを活用した形だったが、今回はマシン制御を行いながら情報統合を行う2つの機能を果たす形としたのが新しい点だ。安井氏は「モーション領域の詳細なデータを活用できる点が、安川電機の強みだ。これらをより有効に活用できる仕組みを強化していく」と語っている。
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