生産セルの情報全てを精緻に統合して活用、安川電機がデモラインで再現:スマート工場EXPO2022
安川電機は、「第6回スマート工場EXPO」(2022年1月19〜21日、東京ビッグサイト)において、同社が提案する新たなモノづくりコンセプト「アイキューブメカトロニクス」を体現するデモラインを出展。「YRM-Xコントローラ」を中心に生産ラインの情報を吸い上げ「YASKAWA Cockpit」により、生産技術者やオペレーターなどそれぞれの技術者に必要な情報を出し分ける展示を行った。
安川電機は、「第6回スマート工場EXPO」(2022年1月19〜21日、東京ビッグサイト)において、同社が提案する新たなモノづくりコンセプト「i3-Mechatronics(アイキューブメカトロニクス)」を体現するデモラインを出展。「YRM-Xコントローラ」を中心に生産ラインの情報を吸い上げ「YASKAWA Cockpit」により、生産技術者やオペレーターなどそれぞれの技術者に必要な情報を出し分ける展示を行った。
安川電機が推進する新たなモノづくりコンセプト「i3-Mechatronics」は、「integrated(統合的、システム化)」「intelligent(知能的、インテリジェント化)」「innovative(革新的、技術革新による進化)」の3つの「i」から構成され、セルのデータ活用を基軸とし、統合してシステム化を実現したり、AI(人工知能)技術を活用して知能化したりすることで実現できる新たなモノづくりの姿を描いている。
その核となる製品として2021年6月に製品化したのが「YRM-Xコントローラ」である。「YRM-Xコントローラ」は、製造現場からのデータを活用できる形で高精度で効率的に集める役割を担う。セルを構成するさまざまな装置のデータを、リアルタイムで時系列同期させた形で収集し、それを制御に反映させることができることが特徴だ。今回はデモラインの生産データや機器の稼働データを「YRM-Xコントローラ」で統合し、データの収集と解析を一括して行うソフトウェアツール「YASKAWA Cockpit」と連携させることで、それぞれの技術者の業務に応じて分析や改善に必要なリアルタイム情報を表示することが可能となる。
安川電機 営業本部 事業企画部 パートナー拡大課 課長補佐の安井康浩氏は「YRM-Xコントローラの製品発売後にリアルの展示会で出すのは初めて。リアルタイムで工程単位のモーターやセンサー情報など動きの情報を全て統合できる点が特徴だ。また、これらの得られた情報を生産技術者や設計者、現場のオペレーター、保全担当者向けなどに出し分けた点も実際の使い方を想定したものだ」と語っている。
安川電機ではさらにこれらで取得できるデータの拡大や、利用できるパートナー先の拡大などを進めていく方針だ。今回は、サーボアンプとサーボモーター間のエンコーダー用通信を活用し、センサー情報を直接サーボアンプに取り込むことができる通信規格「Σ-LINK II」対応のサーボアンプも参考出品。サーボモーターの制御データだけでなく、実際の作業結果をセンシングしたセンサーデータを同じ時系列で取得して収集し「YRM-Xコントローラ」に送ることで、より精緻な作業内容が把握できるようになる。
「作業データの見える化は多くの企業が行っているが、ミリ秒単位の高精度の同期制御などを行っている作業で正確に内容を把握するためには、モーションデータをリアルタイムで把握する必要がある。多くの企業がタイムラグを容認する形で結果の把握に重きを置いているのに対し、どういう制御をかけてどういう結果を得られたのかを精密に把握できるのが特徴だ」(ブース説明員)としている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- セル単位の生産性に貢献するデバイスを、安川電機の2022年
世界的な工場の自動化ニーズの高まりから、コロナ禍後の業績が好転しているのが安川電機だ。安川電機 代表取締役社長の小笠原浩氏に現在の状況と、2022年の方向性について話を聞いた。 - セルのデータを時系列同期で収集しリアルタイム制御、安川電機の新制御機器
安川電機は2021年6月9日、データドリブンによる自律分散型のモノづくりを推進するカギを握る製品として、装置や産業用ロボットなどで構成された「セル」のさまざまなデータを高速、リアルタイムそして時系列に同期し、統合的に制御する「YRM-X(テン)コントローラ」を製品化し、販売を開始したと発表した。 - 「人中心の自動化工場」を描く安川電機、物理面と制御面の柔軟性がカギ
日本ものづくりワールドの特別講演として、安川電機 取締役 常務執行役員 ロボット事業部長の小川昌寛氏が登壇。「ロボットの進化とデータドリブンによる自律分散型のモノづくりの実現 」をテーマに、生産現場で創出されるデータの活用によるソリューション技術の広がりや、デジタルツインの構造化によるさらなる進化について紹介した。 - 安川電機は「アイキューブ メカトロニクス」で何を実現し、何を実現しないのか
IoT活用によるスマートファクトリーが大きな注目を見せる中、安川電機は2017年10月に一連の取り組みを再編成した「アイキューブ メカトロニクス」を発表した。全世界的に製造現場のスマート化が進む中で、安川電機が目指すものとは何なのだろうか。同社執行役員 CTOで技術部長の善家充彦氏に話を聞いた。 - スマート工場は“分断”が課題、カギは「データ取得」を前提としたツールの充実
工場のスマート化への取り組みは2020年も広がりを見せているが、成果を生み出せているところはまだまだ少ない状況だ。その中で、先行企業と停滞企業の“分断”が進んでいる。新型コロナウイルス感染症(COVID−19)対応なども含めて2021年もスマート工場化への取り組みは加速する見込みだが、この“分断”を解消するような動きが広がる見込みだ。 - スマートファクトリー化がなぜこれほど難しいのか、その整理の第一歩
インダストリー4.0やスマートファクトリー化が注目されてから既に5年以上が経過しています。積極的な取り組みを進める製造業がさまざまな実績を残していっているのにかかわらず、取り組みの意欲がすっかり下がってしまった企業も多く存在し2極化が進んでいるように感じています。そこであらためてスマートファクトリーについての考え方を整理し、分かりやすく紹介する。