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DXや内製化など進めた施策が成果に、安川電機が語る2023年の見通しFAインタビュー(1/2 ページ)

世界経済に多くの影響を及ぼしたコロナ禍の影響が一段落しつつあるが、2023年はどのような動きを見せるのだろうか。安川電機 代表取締役社長の小笠原浩氏に2022年の振り返りと2023年の見通しについて話を聞いた。

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 世界経済に多くの影響を及ぼしたコロナ禍の影響が一段落しつつあり、地政学的問題は抱えるものの平常化への動きが進んでいる。こうした動きを背景に、2023年はどのような動きを見せるのだろうか。その中で「2023年は良い年になると見ている」と語るのが安川電機である。2022年の振り返りと2023年の見通しについて安川電機 代表取締役社長の小笠原浩氏に話を聞いた。

2022年は国際的事象の影響を受けるもマイナス影響を抑制

MONOist 2022年はどんな1年だったと捉えていますか。

小笠原氏 さまざまなことが起こったのでまとめるのが難しいが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響から脱却しつつある地域と、影響が色濃く残る地域でまだら模様な状況があり、対応が難しい1年だった。ウクライナへのロシア侵攻など地政学的な問題や為替の問題、これらに関連する調達問題などもあり、国際的なさまざまな動きの影響を受けた1年だといえる。ただ、結果的にはそう悪くない1年だったと捉えている。

安川電機 代表取締役社長の小笠原浩氏
安川電機 代表取締役社長の小笠原浩氏

 中国では、春先に上海でロックダウンが行われ、中国で生産している製品の出荷や部品の調達、中国への出荷など、さまざまな面で厳しい影響を受けた。実際に中国のインバーター工場は約1カ月間止めざるを得なかった。ただ、そのマイナス効果の直撃をそのまま受けたかというとそうではなく、ある程度抑えることはできた。例えば、世界の工場でもある中国での生産活動が一時的に大きな影響を受けたことで、ロックダウンの影響で生産できないために余った電子部品を調達できたり、中国で生産予定だった製品の部品を他に回すことができたり、柔軟な対応で機会損失を抑えられた。

 一方で、欧米はCOVID-19はもう日常のものと捉え、完全に開かれた動きとなった。そのため安川電機ではこれらに対応するために、海外出張や来訪なども各国の規制にのっとった形で許可し、実際にビジネスも動いた。

 事業間や地域間のバランスを保ってきたことが、経営の安定化につながったと考えている。中国でのモーションコントロール事業が影響を受けても、EV向けの新規設備導入によりロボット事業である程度カバーできたり、米国市場の好調でバランスを取ることができたり、悪い部分を良い部分がカバーできる体制となってきたことが、さまざまな変化に対しても対応できる体制へとつながってきている。

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安川電機の2023年2月期第3四半期(2022年3〜11月)のセグメント別業績[クリックで拡大] 出所:安川電機

DXの成果も柔軟な対応に

MONOist 進めてきたDX(デジタルトランスフォーメーション)なども変化への柔軟な対応に効果を発揮したのでしょうか。

小笠原氏 コロナ禍を想定して進めてきたわけではないが、結果として「YDX(YASKAWA digital transformation)」も効果につながったと考えている。2025年までの長期経営計画「2025年ビジョン」の一環として「データを世界の共通言語に」をキャッチフレーズに、独自のデジタル変革(DX)を進めている。リアルタイムで経営状況やあらゆる企業としての活動が見られるように、さまざまな部門のデータ項目の整理を図り、一元的に活動を把握できるようにしてきた。データ1つ1つに「1つの意味」を与え、合わせてシステムもグローバルで統一しシンプルな形に変革を進めているところだ。

 その中で、さまざまな業務において、標準化やデジタル化、データ化を進められた。これらが、さまざまな情勢が変化する中でも、業務の状況を一元的に把握でき、柔軟な対応を行える1つの要因にはなったと考える。製造現場におけるQCサークルでもデータを活用するようになった。あらゆる業務がデータを見て進める形へと変わり、今ではBIツールを使えないと仕事にならないような状況になってきている。DXによる価値は費用対効果をなかなか明確に示せないが、データを中心に業務が見える化したことで変化に柔軟に迅速に対応できたことは1つの成果だ。

 コロナ禍は世界的に大変な状況だったが、従来取り組んできた成果がそのまま問われる実践の場とできたことには意味があった。ここである程度対応できたことで、さまざまな取り組みの成果が実感でき、説得力にもつながっている。そういう意味ではコロナ禍も厳しいだけではないと捉えている。

MONOist 例えば、DXの成果として実際に感じられたことはありますか。

小笠原氏 デジタル化が進んだことで全体最適への意識は確実に高まった。例えば、今ロボットは利益率が上がっているが、そのロボットの中には安川電機の他の部品などがさまざまな形で使われており、社内取引によって成り立っている。以前のようにそれぞれのデータが共有できていない状況では、それぞれで部門の取引だけを考えてしまい、現在のように部材高騰による価格転嫁を進めようとすると、取引価格の交渉に非常に時間がかかっていた。これらの交渉は、全体最適で見た場合、あまり意味がない。それが、DXにより見える化が進んだことで無駄な社内交渉を一気に減らすことができた。より本質的な活動に集中できるようになったと考えている。

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