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「DXはDIYで」、自力でトライすることを重視する安川電機のDXモノづくり最前線レポート

2021年12月にリアルおよびオンラインで開催された「新価値創造展2021」(リアル展2021年12月8〜10日、オンライン展同年12月1〜24日)で、安川電機 代表取締役会長兼社長の小笠原浩氏が「安川デジタルトランスフォーメーション(YDX)」をテーマに講演した。

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 2021年12月にリアルおよびオンラインで開催された「新価値創造展2021」(リアル展2021年12月8〜10日、オンライン展同年12月1〜24日)で、安川電機 代表取締役会長兼社長の小笠原浩氏が「安川デジタルトランスフォーメーション(YDX)」をテーマに講演した。安川電機では長期経営計画「2025年ビジョン」の実現に向け、2018年から安川デジタルトランスフォーメーション(YDX)に取り組んでいる。今回のセッションではデジタル経営の推進や働き方改革、そして、生・販・技の統合を見据えたDXの活動状況を紹介した。

「データを世界の共通言語に」

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安川電機 代表取締役会長兼社長の小笠原浩氏

 安川電機はDXを業務改革と位置付けてYDXを推進している。取り組みを進める意義として小笠原氏は「サプライチェーンがつながっていることを考えると、DXを進めていかなければ、取引から外される可能性が生まれてくる。調達先や協力工場、代理店などあらゆる世界でデジタル化が進んでおり、それに合わせるためにもDXを推進し内部の業務を整えておく必要がある」と語る。

 日本の国際競争力は年々低下している。その中でもデジタル化の遅れが指摘されている。実際に、国際デジタル競争力ランキングでは63カ国中27位(IMD2020、国際経営開発研究所)で、決して先進国だとはいえない状況だ。この要因としては「仕事の標準化ができていない」「データが共通化されていない」ことが大きい。

 そこで、YDXのビジョンでは「データを世界の共通言語に」を掲げた。「社内外それぞれでデータの活用を意識した仕組みに変えていく。個々の業務やデータが標準化されていれば、取引先とのデータフォーマットが合わなくても、マッチングテーブルさえ作れば整合が取れるようになる。グローバルデータベースを中心に置き、業務プロセスの標準化と自動化を進めていく」と小笠原氏は考えを述べる。

“攻めのDX”と“守りのDX”を推進

 YDXにはIとIIがあり、YDX-Iは、いわゆる“守りのDX”とされる業務改革ベースでの取り組みとなる。安川電機の連結企業は約70社あるが、経営のコックピット化として、リアルタイムに経営状況を連結した見える化を進める。具体的には見積もり状況や売上高、利益、経費、工場の稼働率、品質状況などを一元的に閲覧可能とする。まずは、445の勘定項目をそろえてIT化することにより、短期間での決算データのまとめが行えるようになった。連結決算で2週間、四半期決算で1週間の期間でまとめられるようになったという。

 さらに、業務プロセスの標準化を進めることで、人事評価のデジタル化も進めている。働き方改革として「働きやすい会社というよりは、やりがいのある会社を目指す」をスローガンとしており、これをIT化により公平感をバックアップし、ジョブディスクリプションから公平なデジタル評価につなげている。

 また、YDXの進め方については、現場に任せきりにせずトップダウンでスピードを重視して取り組んでいるという。「IT化は手段だと位置付け、目的は意識改革と業務改革であることを明確に示している。新しい動きには反対する動きも出てくるが、それはトップの力で理解を得ていくしかない。また、外の力を使って改革を進めることも考えられるが、全てを外部のコンサルタントにゆだねてもうまくいかない」と小笠原氏は進め方について語る。

 これらのYDX-Iと並行して“攻めのDX”としてYDX-IIも展開。顧客に納めた装置や機器から得られるデータを活用し、デジタルツインを構築することでさまざまなデジタルサービスを展開する。また、グローバルでの品質情報の連携とサービス体制の拡充を図り、リモートメンテナンスや故障予知などのサービス強化とともに、これらの情報を活用して新製品開発力の強化につなげる。さらには、情報連携による、協力工場、販売代理店、サプライヤーを巻き込んだ効率向上の実現に取り組む。「安川電機と協力工場の生産情報をリンクさせ、透明性を持って在庫管理を行えるなど、新たなwin-winの形が構築できる」(小笠原氏)としている。

 ただ、YDX-IIの進め方としては、新たな営業体制も含めたトップと現場の連携や、顧客のIT化の状況に応じた体制、顧客のIT化を加速させる体制などを組み合わせて進めていく必要がある。さらに、ニッチなB2Bビジネスでは、確立されたビジネスモデルがない場合も多く、自分の力で実践していかなければならない場合も多い。「自社内でトライをして、外部のコンサルタントなどを活用して検証を行うようなサイクルで進めていく。顧客の利益を上げるためにはDIYを徹底し、DXを手段として業務改革を行うことで標準化を推進し『当たり前の基準』を高めていく」と小笠原氏は語る。

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