2023年春から鋼材とアルミ板材のCO2を大幅削減、日産と神戸製鋼:材料技術
日産自動車と神戸製鋼所は2022年12月19日、製造時のCO2排出量を大幅に削減した鋼材やアルミ板材の採用を開始すると発表した。これまで日産が神戸製鋼から調達していた材料が、2023年1月から低CO2排出のものに切り替わる。
日産自動車と神戸製鋼所は2022年12月19日、製造時のCO2排出量を大幅に削減した鋼材やアルミ板材の採用を開始すると発表した。これまで日産が神戸製鋼から調達していた材料が、2023年1月から低CO2排出のものに切り替わる。
鋼材は2023年春に発売するミニバン「セレナ」のプレス部品から採用を開始する。アルミ板材はEV(電気自動車)「アリア」や、SUV「エクストレイル」のパネルで採用する。日本で生産する車種だけでなく、海外生産でも低CO2排出の材料の採用を検討していく。
CO2排出を鋼材は100%削減、アルミ板材は半減
採用する鋼材は、ミドレックス技術(※1)を用いて製造したHBI(熱間成形還元鉄)を使うことで高炉からのCO2排出量を大幅に削減する「Kobenable Steel」だ。神戸製鋼の加古川製鉄所や神戸線条工場にこのHBIを多量に装入することで生産するため、加古川製鉄所で製造する全ての鋼材(薄板、厚板、線材、条鋼)でCO2排出を下げられる。また、従来と同等の品質を維持している。
(※1)天然ガスを使った還元鉄製鉄法。高炉法に比べて製鉄工程でのCO2排出を20〜40%抑制できる。
今回、日産車で採用するKobenable Steelは、マスバランス方式によって製造時のCO2排出量を100%削減した「Kobenable Premier」だ。具体的な使用量については今後協議して決める。Kobenable Premierは、スーパー耐久シリーズに参戦するトヨタ自動車の水素エンジン搭載「カローラ」のサスペンションメンバーにも採用されている。
マスバランス方式とは、低CO2の原料とそうでない原料が混在する場合に、低CO2原料の投入量に応じて製品の一部に対して低CO2であることを割り当てる手法だ。CO2排出削減効果は、ISO 20915に準拠して計算しており、DNV BUSINESS ASSURANCE SERVICES UKの認証も受けている。
アルミ板材に関して神戸製鋼は、精錬メーカーEmirates Global Aluminiumとの協力により、太陽光発電の電力のみを使用して電解製錬したアルミニウム原料(グリーンアルミニウム原料)を購入する。これにより、アルミニウム地金製造時のCO2排出を50%削減する。
今後、日産車に適用する神戸製鋼のアルミ板はグリーンアルミニウム原料を使用する。また、日産の生産現場で発生したアルミ板のリサイクル原料の活用も強化することで製造時のCO2排出をさらに削減していく。今後、神戸製鋼から日産にアルミの押し出し材の提案も進めていく。
製造時のCO2排出削減へ
日産は2050年までに製品のライフサイクル全体でカーボンニュートラルの実現を目指している。車両重量の約60%が鉄部品、約10%がアルミ部品であることから、CO2排出を大幅に削減して製造された材料を採用することは、カーボンニュートラルの実現に向けて大きく貢献する。
神戸製鋼以外の鉄鋼メーカーとも、CO2排出低減に向けたコミュニケーションを進めている他、低CO2排出の材料の採用は今後段階的に増やしていく。また、今後はQCD(品質、コスト、納期)に加えてCO2排出削減も考慮した調達の必要性が高まるとしている。サプライチェーン全体のCO2排出削減に向けて、サプライヤーとも中長期のロードマップを検討する。
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