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設計の前に現場と作業の実態をつかむ、そして“使い手目線”で治具を考える製造現場の地味な要!? 治具設計の舞台裏(5)(3/3 ページ)

現役の“治具屋”でもある筆者が、これまで手掛けてきた治具製作の事例を幾つか引用しながら、治具ができるまでの流れや治具設計のポイント、注意点について解説する連載。最終回となる連載第5回では、その他の実装関連治具の製作事例などを取り上げつつ、治具製作の相談を受けた際の心構えについて紹介する。

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加重加熱実験用治具

 こちらの実験用治具は、100箇所のポケットそれぞれが2つの微細な段差を持っていて、段差の1つは全周0.5mm幅の縁で部品を支えるように作っています。このときは、はじめから1枚板の加工では困難だと判断し、穴の寸法を微妙に変えた部品を重ねて、組み立てたときに設計通りの段差が作られる構造にしたものです。文字で説明すればそんなものなのですが、加工する機械にも運動精度がありますから、図面に指示する公差に苦悩したのを昨日のことのように覚えています。

加重加熱実験用治具の微細部品の整列部分
図8 加重加熱実験用治具の微細部品の整列部分[クリックで拡大]

最後に

 実装関連治具の相談を受けるたびに思うのは、マウンター実装であれ、手作業であれ、どこかで必ず人間の手が入る作業なので、単純に「固定できればいい」「脱着が楽ならいい」だけでなく、「誰がやってもミスやストレスの少ない作業になるような工夫をする」という“使い手目線の心構えが重要”だということです。自分では良かれと思って工夫したことでも、現場ではそれが逆にアクシデントの元になることもあるわけで、設計前の現状把握とヒアリングはもちろん、納品後のフィードバックはとても貴重です(それが次の依頼にも生かされるので……)。

 そして、これはどんな治具でも同じことがいえるのですが、“使い手目線”になるためには、設計者本人がそのジャンルについて、ある程度の知見を持って相談に応じることです。当然、お客さまはその筋のベテランですから、相談を受けるこちら側がド素人では要求や意図をくみとれません。

 もし、過去に製作実績のない分野から治具の相談が来た場合は、それが自分1人の責任の範囲で対応できるのか、できない場合はどのような知識を補えばよいのかをまず見極めます。その後、足りない知識を埋めた上で、これまでに積み上げてきた「引き出し」から使えるアイデアを探り、もし有効なアイデアが見つからない場合には、とにかく考える、ひたすら考える……のみです。実務以外のどうでもいい物事や話題にも常にアンテナを張って、アイデアが降りてくるまでただただ考えます。

 その結果、満足を提供できない場合にはできるだけ早く「はっきりとお断り」し、もしも、お客さまが満足できるものを提供できる道筋ができれば、「喜んでお引き受け」します。筆者はそんな姿勢を崩さず、日々取り組んでいます。 (連載完)

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Profile

藤崎淳子(ふじさきじゅんこ)

長野県上伊那郡在住の設計者。工作機械販売商社、樹脂材料・加工品商社、プレス金型メーカー、基板実装メーカーなどの勤務経験を経てモノづくりの知識を深める。紆余(うよ)曲折の末、2006年にMaterial工房・テクノフレキスを開業。従業員は自分だけの“一人ファブレス”を看板に、打ち合せ、設計、加工手配、組み立て、納品を一人でこなす。数ある加工手段の中で、特にフライス盤とマシニングセンター加工の世界にドラマを感じており、もっと多くの人へ切削加工の魅力を伝えたいと考えている。




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