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現場の「ポカヨケ」を設計者目線であらためて考えてみるママさん設計者のポカミス防止法(1/3 ページ)

現場での「ポカミス」はどうして発生するのか。そして、ポカミスを防止する「ポカヨケ」はどうすれば実現できるのか。ママさん設計者と一緒に考えてみよう!

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 皆さんこんにちは! Material工房・テクノフレキスの藤崎です。今回は2019年に入ってからMONOist向けに執筆した1本目の記事になります。今年もよろしくお願いいたします。

 2016年の連載コラム「ママさん設計者の「モノづくり放浪記」」(全6回)でもその一部をご紹介しましたが、ファブレスメーカーの当社では、治具や装置類の製作に必要な部品加工の95%くらいを毎回外注工場さんに依頼しています。

 つい先日、仕入先登録してある外注工場さんを数えてみたら90社以上もありました。定期不定期かかわらず長年継続して依頼しているところもあれば、特殊な加工を1回だけお願いしてそれ以降はごぶさたなところもあったりとさまざまで、「こんなにたくさんの加工屋さんが私の仕事を支えてきてくれているんだなぁ……」と思いながらも、よく見れば加工依頼を取りやめたところも数に含まれています。

 その理由には「廃業」「倒産」という仕方のないものもありますが、最たる理由は「他にもっと安心して依頼できるところが見つかったから」なのです。モノづくりは共同作業ですから、発注者側が望む安心とは「納期を守ってくれる」「満足できる品質」そして、「疑問があれば連絡、問題が起きたら大ごとになる前に相談があること」の3つが最低限です。

 加工依頼を取りやめるに至った過去の出来事をひもといたら、製作上の注意点を図面と打ち合わせで重ねて伝えているにもかかわらず、「できると思って請けたが、実際やってみたらうまく形にならなかったので作り方を変えた。形になればいいんだろ」と、何の断りもなく部品の仕様を変えられてしまったトンデモ事件を思い出しました。結局、その無断変更は完成品に致命的な欠陥をもたらすものだったので、使用不可を告げてその日を限りに加工依頼を止めました。

 まぁ、こんな事例はめったに無いとは思いますが、この加工工場では以前から「思い込みと独断による加工ミス」が見受けられ、その対策にも積極的ではなかったので、このまま不安を抱えて依頼するよりは、安心してお任せできる他社を探すのは当然のことでした。

「ポカミス」と侮るなかれ

 この事例での「思い込みと独断による加工ミス」を含めた人間が引き起こす間違いを、現場では「ポカミス」と呼んでいます。言葉の音はいかにも「軽微な過ち」みたいに聞こえますが、度が過ぎたポカミスは「不良品の多発」「利益の損失」「流出による信用低下」というように、社内外に波及していく忌まわしきものです。そして、ポカミスは人間が関わる作業には必ずつきもので、経験の浅い新人よりも作業に慣れたベテランのほうが、ポカミスを起こす率は高まるものなのです。

 だから、誰かが一度起こしたポカミスをみんなが重く受け止めて、何が原因でポカミスが起きたのか、繰り返さないためにどうすれば良いのかを真面目に考えなくてはいけないですよね。何の根拠もなく「今回だけのミスだと思って見逃してくれ」とか「次はミスしないから安心してくれ」というのはナシです。体質を変えずにその場限りで目の前のポカミスだけを注意していても、次には他のポカミスを起こしかねないからです。

 そういった、人間が関わる加工ミスや作業ミス全般を防止するための仕組みが「ポカ(ミス)」を「よける」=「ポカヨケ」と呼ばれるものです。これは量産ラインを持つ大手製造メーカーではきょうび当たり前のシステムですが、単品加工がメインの小規模製造業でも、無駄の削減と品質向上のために積極的に取り組みたいテーマです。

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