日立ジョンソンコントロールズ空調が栃木事業所を公開、国内生産への回帰も:メイドインジャパンの現場力(34)(2/2 ページ)
日立ジョンソンコントロールズ空調が、同社が展開する日立ルームエアコン「白くまくん」のフラグシップモデル「プレミアムXシリーズ」の出荷式を行うとともに、プレミアムXシリーズを製造する栃木事業所を報道陣に公開した。今後は、同事業所を活用した国内生産を増やしていくことになるという。
人手で行う室外機と室内機の組み立てで協働ロボットによる自動化を図る
プレミアムXシリーズを製造する栃木事業所は、日立グローバルライフソリューションズの栃木事業所内に位置している。1945年に日立製作所(以下、日立)の栃木工場として操業を開始し、ルームエアコンや冷蔵庫などの家電製品を製造してきたが、2015年に日立の空調事業がジョンソンコントロールズ(Johnson Controls)との合弁により日立ジョンソンコントロールズ空調として独立したことで、同じ栃木事業所内で活動しているものの組織としては2つに分かれている。
栃木事業所内には第1〜6まで6つの工場があり、日立ジョンソンコントロールズ空調は第3工場と第5工場で生産を行っている。ルームエアコンを生産しているのは第5工場だ。なお、第3工場では圧縮機を生産している。
第5工場の広さは東西312m、南北100mで、建屋面積は約3万9000m2。板金加工、熱交換器のプレス加工、銅管加工、射出成形のラインでルームエアコンを構成する部品を作り上げるとともに、熱交換器の組み立てを行い、これらの部品を使って室外機/室内機を組み立てて、出荷前に動作確認を全数検査で実施する商用試験などを行っている。
機械や設備を活用する部品加工がほぼ自動化されている一方で、室外機と室内機の組み立てについてはほとんどのプロセスをセル生産やラインによる流れ作業など人手で行っている。ロボットによる自動化は、室外機の組み立てで最初に大型部品を組み付けるプロセスで導入されている程度だ。その理由としては、部品の組み付け方向が一方向ではないため自動化できる作業が限定されることに加えて、その場合セル生産の方がスピードが速く、柔軟にさまざまな作業に対応できるメリットがあるためだ。また、生産量に合わせて人員を調節できることもセル生産の利点になる。
ただし、正確性が求められる熱交換器の組み付け作業に対応可能な作業者の育成も課題になっており、そこで検討されているのが協働ロボットを活用した部分的な自動化である。数年前から室外機の組み立て作業の後半プロセスで協働ロボット活用のトライアルを行っており、一定の成果が得られたことから、2023年以降に室内機の組み立てにも展開する計画である。
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