複雑化するトイレの構造、TOTOの現場はいかに歩留まりを向上させたか:メイドインジャパンの現場力(27)(1/2 ページ)
インテルは2019年7月2日、プライベートイベント「製造業の『現場力』革新フォーラム」を開催。同イベントでは、これら製造業の現場が抱える課題に対してテクノロジーを通じて解決へ取り組む企業、団体の活動が紹介された。本稿では、TOTOが取り組む「現場力」と「品質向上」の施策について紹介する。
製造業の現場が抱える課題は増大の一途をたどっている。多品種少量生産や品質要求の高度化など複雑化するモノづくりへの対応に加え、熟練技術者の減少など人手不足、技術継承の失敗も目立つようになった。【訂正あり】
インテルは2019年7月2日、プライベートイベント「製造業の『現場力』革新フォーラム」を開催。同イベントでは、これら製造業の現場が抱える課題に対してテクノロジーを通じて解決へ取り組む企業、団体の活動が紹介された。本稿では、TOTOが取り組む「現場力」と「品質向上」の施策について紹介する。
【訂正】イベント主催者の申し入れにより、初出時の図版を削除しました。
複雑になる製品構造、いかに歩留まりを高めるか
「TOTOの衛生陶器工場における現場力とIoT(モノのインターネット)を融合した品質向上への取り組み」と題して講演を行ったのは、同社で技術本部 生産技術部 CAE技術グループ 主任技師を務める上田忠雄氏。上田氏が所属する「CAE技術グループ」は、内製シミュレーションソフトウェアに関する技術開発や事業部への技術支援を行う部署となる。
上田氏は「一般的なCAEソフトでシミュレーションが困難だった水洗トイレにおける水の流れも、自社開発したソフトウェアで解析が可能になった」と担当業務を紹介。また、同グループでは2004年から社内業務へのデータ活用を推進しており、最近は製造現場への適用を目指しているという。
TOTOはトイレなどの衛生陶器、浴槽、洗面台といった「グローバル住設事業」が連結売上高の95%を占める。国内では4工場で衛生陶器を生産しており、定められた生産歩留まり改善や品質向上、納期順守の目標を達成するため、これら拠点では製造データの活用、設備自動化、製造シミュレーションの利用を始めている。
衛生陶器は粘土や陶石など20種類以上の天然素材を原料とした大型の焼き物だ。焼き物であるので、整形から乾燥、施釉(せゆう)、焼成工程を通じて、製品の体積は約13%減少する。製品の品質確保には「体積減少を均一かつゆっくり進行させることが重要」(上田氏)とし、これまでは現場の経験によって不良を防ぎつつ高水準な歩留まりを維持してきたとする。
しかし、「時代の流れで現場の暗黙知を数値化する必要が出てきた」と上田氏は述べる。同社では温水洗浄便座と一体型としてデザイン性を高めた衛生陶器の市場展開を進めており、内部構造が複雑化した製品も効率的な生産を行うために現場力の向上が必要となっていた。また、グローバル生産体制を構築するにあたり、国内工場の現場が持つKKD(勘、経験、度胸)を可視化し、グループ内で共有することも課題となっていた。
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