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“多様性”を改善の発想力へ、障害者雇用を強みに変えるオムロン京都太陽メイドインジャパンの現場力(33)(1/3 ページ)

日本の製造業でも働き方改革やダイバーシティが求められる中、障害者雇用で新たな改善のノウハウを蓄積しているのがオムロン京都太陽である。オムロン京都太陽が進める人中心の働き方構築への取り組みについて紹介する。

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 SDGs(Sustainable Development Goals、持続可能な開発目標)などに注目が集まる中、製造業にもダイバーシティ(多様性)に焦点を当てたさまざまな取り組みが進められている。こうした動きにはるかに先駆ける形で、約50年前となる1972年に、世界初の福祉工場としてスタートしたのが「オムロン太陽」である。

 「オムロン太陽」は、オムロンと社会福祉法人である太陽の家の合弁で設立し、障害者を製造現場に受け入れ、障害者雇用を創出する取り組みだ。その後、オムロンと太陽の家との合弁福祉工場も2つ目となる「オムロン京都太陽」が1985年に設立されるなど、障害者雇用の場として、太陽の家と企業との合弁会社による枠組みを増やすきっかけとなった。

 「オムロン太陽」および「オムロン京都太陽」は「誰もが“イキイキ”と働き続けられる現場を創る」をキャッチフレーズとしており、一般的な工場が業務視点で工程を作るのに対し、人視点で現場工程を作り込み、独自のツールや治具の開発などを行い、多様な人材を生かす現場を実現している。どういう発想で“人中心”の現場作りを行っているのか。「オムロン京都太陽」の取り組みを紹介する。

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オムロン京都太陽の俯瞰画像。工場の隣には社員寮が用意されている[クリックで拡大] 出所:オムロン京都太陽

オムロンと太陽の家が出会って生まれた福祉工場

 太陽の家は、1964年の東京パラリンピックに日本選手団長として参加した整形外科医の中村裕氏が「欧米選手は職業を持ち自立しているのに日本選手は職業を持たずに保護される立場」であることにショックを受け、障害者に安定した職業を提供し自立を促すために1965年に創設した社会福祉法人である。「No Charity, but a Chance!(保護より機会を!)」をキーワードとして取り組みを進めてきた。

 しかし、なかなか仕事が集まらず、中村氏は日本中のさまざまな企業を回って、協力を依頼していった。その中の1社がオムロンである。当時のオムロンは、労働争議などを経て企業理念および、企業の公器性への思いを強めていたところだった。1959年に創業者の立石一真氏による「われわれの働きで、われわれの生活を向上し、よりよい社会をつくりましょう」という社憲も制定され、社会課題解決への意欲を高めており、両社の企業理念の共通項も多いことから、社会福祉法人と民間企業による世界初となる福祉工場「オムロン太陽」が生まれた。

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オムロンと太陽の家の協力関係[クリックで拡大] 出所:オムロン京都太陽

違いを認め人を中心に現場を作る工場へ

 「オムロン京都太陽」は、行政からの誘致に応え、オムロンと太陽の家の合弁会社2社目として1985年3月に設立。生産従事者は186人でその内障害者が116人となる。製造しているのは、オムロンの制御機器や健康機器、またそれらの部品などだ。ソケット関連がもっとも多いが、電源や光電センサー、タイマーなどさまざまな分野の製品を製造している。種類も約1500種以上と多く、少量多品種製造を行う製造現場となっている。

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オムロン京都太陽の企業概要[クリックで拡大] 出所:オムロン京都太陽

 オムロン京都太陽が、3つの使命として掲げるのが「職能的重度障害者の雇用機会創出」と「事業を通じて顧客満足と収益を確保」「障害者雇用ノウハウを広く社会に提供」である。障害者雇用を進めるからといって収益性を犠牲にすることはなく、それぞれの能力に応じて改善を進め、生産性を高めることで経営面でも貢献することを目指している。さらにここで得られたノウハウを共有していくことで、広く自然な形で障害者雇用が広げることを目指す。

 ただ、人材を生かすといっても簡単なことではない。オムロン京都太陽が作る製品は一定の基準を満たす必要のある工業製品である。一方で、そこで働く従業員は、一口に「障害者」といっても、多様な障害の種類や程度があり、まさに「多様性」を象徴するような存在である。これらの背反する要素を両立させる必要があるというわけだ。そこで目指すのが人を中心に位置付け「誰もが“イキイキ”と働き続けられる現場を創る」ということだ。

 オムロン京都太陽 代表取締役社長の三輪建夫氏は「一般的な工場では業務視点で要件を満たす人材を選んで雇用し、決められたやり方で決められた作業をするというやり方が当たり前だ。しかし、オムロン京都太陽では人によってそれぞれできることが大きく変わってくる。こうした個々の人を中心として現場の作業を作り上げていることが特徴だ。違いを認めてそれを踏まえたやり方を準備することで、多様な人材を生かす現場としていく」と語っている。

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