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最新金属3Dプリンタが出そろったJIMTOF2022、海外のノウハウ先行に警鐘鳴らす声もJIMTOF2022(2/2 ページ)

「第31回日本国際工作機械見本市(JIMTOF2022)」(2022年11月8〜13日、東京ビッグサイト)では特別企画として、AM(Additive Manufacturing、積層造形)エリアが設けられ、多くの企業が金属3Dプリンタの最新機種を出展した一方で、日本の現状に危機感を訴える声もあった。

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いずれ海外のAM製部品が本格参入、日本の現状に警鐘を鳴らす声も

 各ブースでは担当者に熱心に説明を聞く来場者が見られた。一方で、まだ装置が高額であることもあり、金属3Dプリンタは日本で本格的な導入には至っていないのが現状だ。そんな中、JIMTOF2022のAMエリアの一角で「一歩足を踏み出しましょう」と来場者に訴えていたのが、日本AM協会専務理事の澤越俊幸氏だ。日本AM協会は2014年に発足した3Dものづくり普及促進会を前身として、AMに関する技術の向上および普及などを目的に2022年に設立された。

 澤越氏は従来の加工方法とAMの根本的な違いを「AMはデジタル製造ソリューションだ。レシピを固めればどこでも均質的にモノが作れる。人に頼らなくて済む。だから海外はAMに切り替えていく。日本は優秀な作業者がいるから人に頼る。素晴らしいことだが、もしその人がいなくなったり、災害で設備が使えなくなったら、作れなくなってしまう。AMならレシピのデータさえ保管してあれば、どこでも作れる」と説く。


精度に定評のある米国のBMFの樹脂の造形サンプル[クリックして拡大]

 澤越氏はAMの活用に向けた現実的な課題を「試作の段階ならまだいいが、量産となるとAMは変えるべきところが多すぎる。AMの装置を導入しただけではダメで、設計や品質保証も変えなければならない。後加工も必要になる。トータルで取り組むには時間とコストがかかる」と指摘する。

 現在の金属AMの用途は航空宇宙産業向けが多いが、日本は欧米に比べ航空宇宙産業の裾野が小さく、投資を回収できる目どが立ちづらい。ただ、その間も導入が進む欧米ではノウハウが蓄積されていく。澤越氏は「AMを活用できるようになるのに1、2年はかかる。高い装置を今すぐ買うような、清水の舞台から飛び降りるようなことはしなくいい。メーカーや受託造形サービスの話を聞いて、試しに作ってみることだ。そうすればAMの長所、短所が分かってくる。見えてくることがたくさんある。何もしなければ、何も始まらない。見ているだけではだめだ」と強調する。


GEの航空機エンジンにはAM製造部品の採用が進んでいる[クリックして拡大]

 企業努力だけでは限界がある。だからこそ、政府のサポートも要請している。「いずれ海外企業がAMで製造した軽量で高機能な部品と戦わなければならなくなる。いつか海を渡ってくるのは間違いない。金属3Dプリンタ単体を見ると追い付けない領域も出てくる。ただ、日本のモノづくり魂は一度火が付けば爆発的に進む。まず火を付けることだ。設計や後加工までトータルで見ればまだ追い付ける可能性はある」(澤越氏)。

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