CFRPを高精度で切り、溶接ワイヤで積層造形を行う、三菱電機の新たな加工機群:JIMTOF2022
三菱電機は「第31回日本国際工作機械見本市(JIMTOF2022)」(2022年11月8〜13日、東京ビッグサイト)において、CFRP切断用レーザー加工機やワイヤ方式のレーザー金属3Dプリンタなど新たな加工を実現する製品群を紹介した。
三菱電機は「第31回日本国際工作機械見本市(JIMTOF2022)」(2022年11月8〜13日、東京ビッグサイト)において、CFRP(炭素繊維強化プラスチック)切断用レーザー加工機やワイヤ方式のレーザー金属3Dプリンタなど新たな金属加工を実現する製品群を紹介した。
JIMTOF2022の三菱電機ブースの様子。開催前日の2022年11月7日に発表されたFAシステム事業部のグローバルスローガン「Automating the World」が早速披露されている[クリックで拡大]
JIMTOF2022で実演展示されたのが、2021年10月に発売した3次元レーザー加工機「CVシリーズ」だ。発振器と増幅器を同一筐体に統合した炭酸ガスレーザー発振器と、独自の加工ヘッドを搭載し、CFRPの微細加工を実現している。また、切削加工やウオータージェット加工などの既存の工法の約6倍となる加工速度を実現し、従来生産性が課題となっていたCFRP加工の効率を大幅に高めることに成功している。
CFRPはクルマや自転車、ゴルフ用品、釣り具など幅広い領域で活用が広がっているが、本格的な普及はこれからの素材だ。「EV(電気自動車)向けのバッテリーケースの加工を行う用途で引き合いが来ている。特に、中国メーカーなどから反応が良く、海外で先に動きが広がりそうだ」と三菱電機 産業メカトロニクス製作所 レーザー製造部長 佐藤東洋司氏は述べている。
またJIMTOF会場のAMエリアでは、2022年3月に発売した指向性エネルギー堆積法(DED方式)の金属3Dプリンタ「AZ600」を紹介した。「AZ600」は、溶接用ワイヤをレーザーで溶融し、3次元構造を高品質に造形するワイヤ方式を採用した金属3Dプリンタだ。
空間同時5軸制御と加工条件を協調制御するデジタル造形技術により、安定的に高品質な3次元造形を実現できることが特徴だ。金属3Dプリンタは金属を溶融し積層するため、積層軸の制御に加え、素材の送り出しや温度管理など複雑な制御が必要になるが、三菱電機では基幹部品をほぼ全て内製しており、高精度で安定した品質を実現できたとしている。また、一般的な溶接ワイヤを使用できるために素材も入手しやすく、容易にニアネットシェイプ加工や肉盛り補修などを行える。
発売後はまず、機器としての提案に加えて、試用も含めた受託製造サービスを展開し、さまざまな加工依頼を受けているという。「意外に多いのが溶接の加工依頼だ。溶接は自動化が進んでいる分野だが人手で行っている領域もまだ残されており、一方で熟練工の不足が進んでおり、さらなる自動化ができないかと検討している企業が多い」と三菱電機 産業メカトロニクス製作所 レーザ製造部 AMシステム設計課長の木場亮吾氏は語る。
また、参考出品として、工作機械内で加工油が付着した状態でもワークの形状測定を可能とする油層透過型形状測定システムを出展した。これはレーザーセンサーを用い、油層による影響を事前に把握して調整することで、10μmオーダーの精度の測定ができるようにしたものだ。さらなる高精度での測定が必要な場合は、専用の3次元測定器などで行う必要があるが、油層透過型形状測定システムは「そこまでの精度は必要ないが、機上で加工結果を測定したい」というニーズをターゲットとしている。
油層透過型形状測定システムはセンサー部分と測定システム部分とに分かれており、センサーサイズは手のひらサイズだ。既に稼働している工作機械内に設置することで加工後のワーク形状の3次元測定が可能となる。また、CAD情報との比較も自動化でき、良否判定などを合わせて行えるという。既に基本的な技術課題はクリアしているとし、今後はインタフェースの改善や用途に合わせたアプリケーション開発を進めていくという。
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