幸せホルモンのオキシトシンを生体の脳内で検出する蛍光センサーを開発：医療技術ニュース

大阪大学は、神経ペプチドの1種で、幸せホルモンとも呼ばれるオキシトシンを高感度に検出する蛍光オキシトシンセンサーを開発した。同センサーを用いて、生きたマウスの脳内からオキシトシン動態を測定することに成功した。

[MONOist]

　大阪大学は2022年9月23日、神経ペプチドの1種で、幸せホルモンとも呼ばれるオキシトシンを高感度に検出する蛍光オキシトシンセンサー「MTRIA_OT」を開発し、生きたマウスの脳内からオキシトシン動態を測定することに成功したと発表した。金沢大学との共同研究による成果だ。

研究の概要［クリックで拡大］ 出所：大阪大学

　MTRIA_OTは、細胞外オキシトシンが結合することで、明るさが大きく変化する。オキシトシン受容体と緑色蛍光タンパク質で構成されるキメラタンパク質センサーに変異を加え、蛍光強度変化が高い変異体をスクリーニングすることで開発に成功した。最終的に、オキシトシンに対して最大8倍の蛍光強度変化を示している。

　生きた動物の脳内オキシトシン動態を計測するため、開発したMTRIA_OTをマウスの脳に導入したところ、薬物投与や光刺激で人為的に誘導した脳内オキシトシンの上昇を観測できた。他に、外界の刺激に応答した内因性のオキシトシン濃度制御も検出できた。

　また、急性ストレス刺激や個体間相互作用刺激、自由行動下など、刺激の種類によりオキシトシン濃度の変化を計測。その結果、刺激の条件により、オキシトシン変動の時間スケールが異なることが明らかとなった。

「MTRIA_OT」を用いた脳内オキシトシン動態の計測［クリックで拡大］ 出所：大阪大学

　オキシトシンは、幸せや愛情を感じたり、不安やストレスを緩和するなど、感情に重要な役割を果たしている。自閉スペクトラム症や統合失調症などの治療に役立つ鍵として注目されており、MTRIA_OTを活用することで病因解明や治療薬開発につながることが期待される。