食品工場で広がるAI画像検査、フードロス削減にも貢献:FAニュース
YEデジタルは2022年8月26日、オンラインセミナー「食品製造におけるAI活用事例と効果〜AI活用事例から食品製造業が抱える人手不足の解決策が分かる〜」を開催、近年導入が広がるAI(人工知能)を用いた画像診断など食品産業へのAI導入の可能性を紹介した。
YEデジタルは2022年8月26日、オンラインセミナー「食品製造におけるAI活用事例と効果〜AI活用事例から食品製造業が抱える人手不足の解決策が分かる〜」を開催、近年導入が広がるAI(人工知能)を用いた画像診断など食品産業へのAI導入の可能性を紹介した。
AIによる需要予測でフードロス削減
基調講演では、北海道大学 大学院情報科学研究院 自律系工学研究室 教授の山本雅人氏が「AIの食産業の応用事例とフードロス削減へ向けた需要予測の取り組み」と題して講演を行った。
山本氏は冒頭、近年のAIの画像認識技術の発展を振り返り、食品製造業へのAIの応用例は、AIによる食品外観検査、AIを用いた調理/盛り付けロボット、AIによる需要予測の大きく3つに分けられるとした。
調理/盛り付けロボットでは「最近、盛んに行われている。ロボットに対してAIを使った判断が取り入れられて発展も著しい」と各社の製品を紹介する一方で、導入コストや導入後のメンテナンス、品質管理などの課題も指摘した。
そして、AIによる需要予測に関して、「これまで話題になっていないが、他の分野では使われており、食品製造業においても有効な取り組みになる」と語り、具体的な導入例を紹介した。
ある商品カテゴリーの実際の販売数を予測する取り組みでは、過去の約3年分の納品数や販売数、それに対応する曜日、日付を基に、AIによるそれ以降の販売数の予測と実際の販売数を比較した。すると、前週データの踏襲や人による予測より、AIによる予測の方が機会損失や返品が少なくなったという。
北海道札幌市の札幌ビューホテル大通公園とは、朝食券数や宿泊予約データ、メニューごとの準備量、使用量、廃棄量などを基にAIでメニューごとの需要予測に取り組んでいる。朝食ビュッフェの廃棄食品を減らすことが目的だ。これまでのデータ分析から、女性とガトーショコラやポテトフライ、紅鮭とホッケなどの相関関係が分かってきているという。
山本氏は「最終的には、前日までの予約状況と次の日の天気予報から、当日の各メニューの使用量を予測する試みをしている。これができれば、廃棄量を少なくするよう準備数を調整することができる」と話し、「AIによる需要予測は比較的初期コストがかからず、今後注目されていくのでは」と期待した。
AI画像検査は個体差の大きい食品工場向け
YEデジタル デジタルプロダクト本部 AI開発部の有吉浩平氏は「食品産業向けAI画像診断とは何か?導入方法と効果」をテーマに講演した。
有吉氏は従来のルールベースとAIを活用した画像判定の違いについて解説、ルールベースは設定したルールに沿った範囲に関しては高精度で処理速度が速く、決まった形状を持つ工業製品などに向いていると解説した。一方、AI画像検査は人が検査するようなあいまいな対象の検出ができるが、その分100%の精度は難しく、処理速度もかかる。有吉氏は「個体差が大きい食品工場にはAI画像診断が適している」と話した。
その上で、原料受入工程や製造工程の異常検査、包装工程のかみこみ検査、箱詰工程のパッケージの外観検査など、食品工場では多岐にわたってAI画像検査を適用でき、有吉氏は「検査内容にあったAIアルゴリズムを選択する必要がある」と語った。
YEデジタルが提供するAI画像判定サービス「MMEye」には、良品と各種不良品の判別などを行う画像分類、画像内の複数対象を検知して良品と不良品を判別する物体検知、画像中の領域を画素単位で検知する領域検知、良品画像のみを学習させて不良品を判別する良品学習などが可能となっている。
有吉氏は、ロッテの狭山工場における半製品段階の外観検査や、農産物の等級判断、ピザの具材配合比率などにAI画像検査が導入されている例を紹介、既存のルールベースの検査装置にAI検査を後付けすることもでき、検査項目の追加や過検知も可能という。
また、有吉氏はAI画像検査は目視検査の省人化や判断基準の均一化だけでなく、フードロスの削減や原料コストの抑制にも貢献できるとし、AI画像検査で焼き過ぎなどの不良発生を速やかに生産設備にフィードバックしてフードロスを削減した事例も紹介した。
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