需要予測の高度化で食品ロス低減、食品メーカーに必要なサプライチェーンDX:サプライチェーン改革
インフォアジャパンは2021年7月21日、食品/飲料業界を取り巻くさまざまな課題の解説と、それらを解決し得る同社製品を紹介する説明会を開催した。需要予測の高度化などサプライチェーンのDXが食品ロス問題解決を促す可能性がある。
クラウドベースERPソリューションなどを展開するインフォアジャパンは2021年7月21日、食品/飲料業界を取り巻くさまざまな課題の解説と、それらを解決し得る同社製品を紹介する説明会を開催した。需要予測の高度化などサプライチェーンのDXが食品ロス問題解決を促す可能性がある。
食品生産量の3分の1が廃棄される
インフォアジャパン 執行役員 ソリューションコンサルティング本部 本部長の石田雅久氏は、食品/飲料業界が対処すべき共通課題として「食品ロス問題」「需給バランスの見極め」「消費者に対する透明性の確保」「安全な食品と作業空間の確保」「販売チャネルの進化」の5点を指摘した。中でも、食品製造業にとって非常に大きなテーマとなり得るのが食品ロス問題である。
食品ロス問題は環境問題や食料問題などグローバルな問題系につながっており、国際連合食糧農業機関(FAO)が世界で生産される食料の3分の1が廃棄されている現状を問題視するなど、食品/飲料業界全体が改善に向けて取り組むべきグローバルな課題として認識されつつある。石田氏は、農林水産省が発行した2018年度のデータを基に、食品業界や外食業界などのサプライチェーン上で何らかの理由で廃棄される食品量(事業系食品ロス)は現在324万トンに上ると推計されるが、その内21%に当たる126万トンが食品製造業によって廃棄されたものだと指摘する。このため、食品ロス問題の解決においては食品製造業の取り組みが大きな重要性を持つ。
需要予測の高度化がロスを減らす
食品ロス削減に向けた具体的な解決策として、農林水産省は「需要予測の高度化や適性受注の推進」「原料の無駄のない利用、製造・出荷工程の適正管理鮮度維持」といった案を取り上げている。ここで重要なのが、サプライチェーンの全体計画立案につながる情報管理の仕組みである。計画立案は顧客のニーズ把握や需要変動の予測、生産や保管、配送などの各種制約条件を踏まえて検討する必要がある。
こうした作業をサポートするクラウドベースのソリューションとして、石田氏は「Infor SCP 需要計画(以下、需要計画)」「Infor SCP 供給計画(以下、供給計画)」「Infor SCP S&OP(以下、S&OP)」の3つを紹介する。
「需要計画」では季節や市場の成長動向などの統計データを基に、機械学習を取り入れた予測システムが需要予測を導出する。これによって最適な生産計画の立案が可能になる。また「供給計画」では、保管や配送などの制約条件だけでなく、食品製品の賞味期限や日程的な制約を考慮したサプライチェーンの計画立案を可能にする。「S&OP」では、市況変化に応じて、シミュレーションに基づく最適なシナリオ選択を支援する機能などを搭載している。
石田氏はインフォアジャパンのソリューションの活用による食品ロスへの影響について「予測の高度化や在庫の最適化や可視化は、結果的に食品ロスの低減につながり得る。当社のソリューションは原料生産から食品加工、配送などの情報までカバーして、そこにIoT(モノのインターネット)やAI(人工知能)などの技術を組み合わせることも可能だ」と説明している。
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