DMM会長の亀山氏が見る日本製造業の現状、今後の成長への道筋とは:モノづくり最前線レポート
DMM.com(DMM)は2022年7月28日に「製造業DXオンラインセミナー」を開催した。本稿では、DMM 会長 兼 CEOの亀山敬司氏らが参加したパネルディスカッション「これからの時代の製造業の生存戦略、成長戦略」の模様を伝える。
DMM.com(DMM)は2022年7月28日に「製造業DXオンラインセミナー」を開催した。本稿では、DMM 会長 兼 CEOの亀山敬司氏、FAプロダクツ 代表取締役会長 天野眞也氏、STANDARD 営業本部 営業本部長 吉原弘峰氏が参加したパネルディスカッション「これからの時代の製造業の生存戦略、成長戦略」の模様を伝える。
海外に学べば日本製造業復活の可能性は高い
DMMではインターネット動画配信をはじめ、さまざまな事業を手掛けており、2014年にはモノづくりができるコ・ワーキングスペース「DMM.make AKIBA」を東京・秋葉原にオープンした。レーザーカッターやUVプリンタ、DC電源アナライザーなどを24時間使用できる他、専門家への技術相談も可能など、新たなモノづくりの担い手を育成しようとしている。
冒頭、司会者から日本の製造業の現状について意見を求められるた亀山氏は「DMM.make AKIBAを立ち上げた頃に比べて良い方向に向かっている。理由は円安が進み、悲しいかな人件費も上がっていない。先日も日本の不動産や人材が買われているというニュースを見たが、日本に良質な人材がいることは間違いない。日本自体が見直される時期と感じており、買われる前に立ち上がり買う側に回ることが製造業が向かうべき道」と述べた。
一方で、亀山氏は日本の製造業の課題としてマーケティングなどを挙げて、「良いモノを作ろうという思いはあるが、どういったモノが求められているかの考察が足りない。海外から学ぶべきところを学べば、まだまだ勝負になる。製造業復活の可能性は高い」と期待した。
天野氏も人材に関する亀山氏の意見に同調し、「日本の生産技術のエンジニアは世界屈指の能力がありながら世界で最も安い」と話した。その上で、「これからのモノづくりはどれだけ環境負荷が低いかが鍵だ。環境負荷の分からない製品は買ってもらえなくなる。安心安全のブランドを持つ日本の製造業は、サプライヤーとしてのチャンスはある。さらに変種変量生産が求められていく中で、日本は生産技術そのものをビジネスとして提供することもできる」と意気込んだ。
さまざまな企業のDX支援を手掛けてきた吉原氏は「日本の製造業は、他の業界と比べるとDXが進んでいる。ただ、全体の戦略が欠けていて、多くのプロジェクトが立ち上がって優先順位を迷っている。何に取り組むのか戦略を立てるのが次のステップとして重要だ」と語った。
大企業はスタートアップ企業の積極支援を
日本のビジネスシーンでは、事業展開の流れを「0→1」(事業の芽を生み出す)「1→10」(事業化する)「10→100」(事業を安定かつ効率化する)という言い方をすることがある。亀山氏もそれになぞらえながら「製造業でいえば、0→1はプロトタイプの製作、1→10はその製造の収益化、10→100は品質を高め不良品を出さずに生産すること。日本はこの10→100に強い」と語る。
また、亀山氏は過去にDMMがモノづくりのスタートアップ企業を支援してきた経験を「なかなかうまくいかなった」と振り返りながら、その要因を「モノづくりには在庫管理や製造管理、保守など組織力が必要で、これらをスタートアップが作り上げるのは難しい」とした。
その上で亀山氏は製造業の大企業に対して「スタートアップが起業して大企業になるよりは、大企業がスタートアップを吸収し、既存の販売ルートなどを活用しながらスタートアップを伸ばしていくことが現実的な成長の形となる。日本にも0→1をやりたい人はいる。彼らを、経験豊富で10→100ができる人材を持つ大企業が支えてくれたらうれしい」と呼びかけた。
同イベントのアーカイブ映像はDMMが運営する「製造業ものづくり Week」でも公開予定となっている。
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