ニュース
将来の新規がん治療へ、アニサキスなどへの機能性コーティング技術を開発:医療技術ニュース
大阪大学は、アニサキスなどの線虫の表面を厚さ約0.01mmの柔軟性のあるゲル薄膜でコートする方法を開発した。線虫の動きには影響を与えずに、紫外線耐性やがん細胞を殺す物質を作り出す機能など、さまざまな機能を付加できる。
大阪大学は2022年6月17日、アニサキスなどの線虫の表面を、厚さ約0.01mmの柔軟性のあるゲル薄膜でコートする方法を開発したと発表した。同大学大学院基礎工学研究科教授 境慎司氏らの研究グループによる成果だ。
線虫をコートする薄膜には、さまざまな機能を持つ分子を含ませることができるため、線虫に新しい機能を付加できる。例えば、紫外線の透過を防ぐ分子を含む薄膜でコートすると、線虫の紫外線耐性が向上する。
また、血液中のブドウ糖から過酸化水素を生成する酵素を含む薄膜でコートした線虫を、がん細胞を含む培養液に入れると、24時間後にはがん細胞を死滅させることができた。さらに、薄膜に薬物を保持して放出する機能を付加することもできる。
なお、薄膜は匂い検知能力や運動性に影響を与えないため、線虫はコート前と同じように好みの匂いに向かって動くことができる。
線虫の一種であるアニサキスは、がんの早期発見に用いられる線虫と同様にがんの匂いに向かって動くことが知られている。また、胃液にさらされてもすぐには死なないという特徴も持つ。アニサキスをがん治療に応用するには、不要になったアニサキスの除去やアレルギーの抑制など多くの課題があるが、今回の研究成果により、アニサキスによるがんの探索や治療への可能性が示された。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- ネコのマタタビ反応が反応性を増大させ、蚊の忌避効果を高める
岩手大学は、ネコがマタタビをなめたり、かんだりする行動で葉が傷つくと、ネコのマタタビに対する反応性が増大するとともに、マタタビの持つ防虫効果が高まることを発見した。 - 高品質な骨を誘導して強度化する脊椎ケージを開発、金属3Dプリンティング活用
大阪大学は、骨配向性を整えることを設計コンセプトに組み込んだ、チタン合金製脊椎ケージを開発した。大型動物を用いた実験により、従来ケージの3倍以上も強い骨との結合強度が示された。 - サイボーグ技術による手指運動リハビリシステムが医療機器認証を取得
メルティンMMIの「MELTz手指運動リハビリテーションシステム」が、第二種医療機器製造販売業許可とクラスII医療機器認証を取得した。これにより、同システムを自社設計および住友ファーマと共同開発し、製造販売が可能となった。 - 妊産婦のうつの予兆検知技術を開発する共同研究を開始
島津製作所は、「妊娠うつ・産後うつの発症・重症化を防ぐための兆候を検知する技術」に関する共同研究を開始した。心電デバイスと心拍変動解析技術を組み合わせ、汎用アルゴリズムを開発する。 - ひきこもりに特徴的な血液バイオマーカーを発見
九州大学は、ひきこもり状況にある人の血液中の代謝物や脂質を測定し、ひきこもりに特徴的な血液バイオマーカーを発見した。また、機械学習アルゴリズムを作成し、ひきこもり者と健常者を高精度に識別した他、重症度予測にも成功した。 - フェロモンがオス同士の攻撃行動引き起こす神経メカニズムを解明
東京大学は、オスマウス同士の攻撃行動の制御に重要なフェロモン受容体として、Vmn2r53を同定した。Vmn2r53を介した情報が視床下部の特定の神経回路に伝達され、攻撃中枢が過去の攻撃経験に依存して活性化することが明らかになった。