パナソニックの物流ショーケース、彩都パーツセンターが見せる「ウラの競争力」:物流のスマート化(4/4 ページ)
パナソニック コネクトが「現場プロセスイノベーション」の物流分野における自社実践の場とする彩都パーツセンターを報道陣に公開。2018年10月の稼働開始から、生産性分析の工数削減やピッキング効率の向上、コストの適正化などで成果を上げており、今後はこれらの自社実践ソリューションをSaaSアプリケーションとして切り出し外販していく計画である。
AI画像処理
彩都パーツセンターはオートストアを導入して、在庫部品の効率的な収納や出庫に利用している。オートストアでは、ビンと呼ばれるコンテナを用いて在庫を管理しているが、このビンから目的の部品を取り出す際には、部品をパッケージした袋や箱の取り出し、袋や箱からの部品の取り出し、バーコードの読み取り、台車に載せる、という大まかに分けて4つの作業工程を実施することになる。
AI(人工知能)画像処理は、作業内容をカメラで撮影して工程ごとに分解し、作業にかかった時間などを分析するためのアルゴリズムである。立ち上げ当初は、骨格分析に基づくAIアルゴリズムを採用しており、画像処理に時間がかかることもあって、録画データに対して後から作業内容を分析するという内容になっていた。
そこで、2022年1月からは、IEの知見に基づきオートストアでのピッキング作業を標準化した作業プロセスに基づいて画像処理プロセスを簡素化し、リアルタイムでの作業分解と分析を行えるようにした新開発のAIアルゴリズムを採用している。骨格分析では、手先などがカメラに映らない場合に精度が下がることが課題になっていたが「リアルタイムであるにもかかわらず、90〜95%の精度を出せている」(木村氏)という。
積載量可視化
積載量可視化は、コンテナや棚、カート内の充てん率を自動で把握する空間センシング技術である。天井にカメラや3Dセンサーを設置しており、カートであればその真下を通るだけで箱数や積載率を検出できる。コンテナ充てん率の自動データ化によって倉庫スペース効率を、カート内の充てん率の自動データ化によって輸配送の積載効率の最大化を実現できるとしている。
なお、彩都パーツセンターの改善実績としては、ピッキング作業の分析工数が2016年比で40分の1に当たる15分、ピッキング工数の生産性が2017〜2019年の年平均で25%向上、コストの適正化が2019年の前回契約更改時と比べて10.8%減を達成しているという。
ボトルネック対策はピッキングから個装のプロセスへ
ここまでは主に、ボトルネックになっていたとするピッキングが対象になっているが、開設から約3年半の取り組みの中で解消のめどが立ちつつある状況だ。そして、新たなボトルネックとして認識されているのが、ピッキングの後の個装/梱包である。
個装/梱包エリアは、ピッキングの場になっている3つのエリアと比べて広くはない。そこで、天井に360度カメラと通常のボックス型カメラを設置して、作業員の動線分析や、AI画像処理による作業内容の分解と分析に取り組んでいる。一力氏は「ボトルネックを1つ解決すると、そこから新たなボトルネックが抽出されるので、常にその解消を積み重ねていく必要がある」と述べている。
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