測定時間1分の超高速とPCR以上の超高感度、2つのウイルス検出法を開発:医療技術ニュース
産業技術総合研究所は、デジタル検出法と呼ばれる高感度バイオセンシング法を基に、測定時間1分の超高速ウイルス検出法と、PCRを超える超高感度ウイルス検出法を開発した。
産業技術総合研究所は2022年5月19日、デジタル検出法と呼ばれる高感度バイオセンシング法を基に、測定時間1分の超高速ウイルス検出法とPCRを超える超高感度ウイルス検出法を開発したと発表した。これらの検出法を用いて、唾液からウイルスを検出できることも確認した。埼玉大学との共同研究による成果だ。
→特設サイト「新型コロナウイルス 製造業が直面する未曾有の試練」
デジタル検出法とは、フェムトリットルからピコリットル程度の微小な反応容器(ウェル)を数十万個ほど並べ、バイオ物質を高感度に検出する手法。今回の研究では、体積が0.5ピコリットルのウェルのアレイを用いたデジタル検出法に、埼玉大学が開発した凝集誘起発光(AIE)試薬を組み合わせることで、超高速ウイルス検出法を開発した。
インフルエンザウイルスを用いて検出試験を実施したところ、アレイ中のウェルが発光する様子が観察できた。この発光ウェルにはウイルスが閉じ込められており、その数でウイルス濃度を定量評価できる。発光ウェル数から評価した検出下限のウイルス濃度は、従来の迅速抗原検査キットを超える検出感度を示した。
ウェルアレイとAIE試薬を用いて測定した蛍光像(A)と発光ウェルをカラーで表示したAの解析図(B)。Bの発光ウェル数の解析に基づく、インフルエンザウイルス検出結果(C)[クリックで拡大] 出所:産業技術総合研究所
また、この超高速ウイルス検出法と同じウェルアレイを用いて、1つのウェルに多数の磁気微粒子を格納する、多粒子格納デジタル検出法も開発した。従来法では1つのウェルに1個の磁気微粒子を格納するが、複数格納することで磁気微粒子の濃度を高め、素早く多数のウイルスを捕捉できる。これにより、従来のPCR法を超える検出下限訳100コピー/mLで、インフルエンザウイルスの検出に成功した。
今回検証したインフルエンザウイルスに加え、今後は新型コロナウイルスやノロウイルスなどの検出実証を進める。将来的には、施設来訪者などの唾液からウイルス保有の可能性を1分間で検知する、ウイルスゲートキーパーの実用化に向けた研究開発に取り組むとしている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- ≫特設サイト「新型コロナウイルス 製造業が直面する未曾有の試練」
- ステルスオミクロン株を含む3変異株が識別可能なPCR検査キットを発売
カネカは、新型コロナウイルスのオミクロン株、ステルスオミクロン株、デルタ株を同時に識別できるリアルタイムPCR検査キットを発売した。各株に特徴的な変異を検出し、その組み合わせにより3種の株を識別する。 - 銀ナノ粒子でウイルスを不活性化、曲げられる透明ヒーターを開発
ダイセルは、通電1分で表面温度が約60℃まで上昇し、温度を維持する「曲げられる透明ヒーター」を開発した。銀ナノ粒子を使用するため、短時間で効果的な抗菌、抗ウイルス作用が期待できる。 - 医療機器の電磁規格に対応したオゾン発生装置を共同開発
コニカミノルタとタムラテコは、オゾン発生装置「バクテクター2.0MD」を共同開発した。ウイルスや菌を不活性化する低濃度オゾンガスの発生プロセスに、コニカミノルタの電磁波制御技術を導入することで、医療機器の電磁規格に対応した。 - 高出力深紫外LEDにより、エアロゾル中の新型コロナウイルを迅速に不活性化
東京大学医科学研究所は、小型、高出力の深紫外発光ダイオード(DUV-LED)照射光源を開発した。高出力DUV-LEDが、液体中とエアロゾル中の新型コロナウイルスを迅速に不活性化することを実証した。 - 静電気の力を利用して空間に浮遊する新型コロナウイルスを低減
富士通ゼネラルは、静電気を利用した空気清浄技術「2ステージプラズマクリーン技術」により、浮遊新型コロナウイルスが10分間で99.9%以上低減することを確認した。 - 6畳の試験空間で帯電微粒子水の新型コロナウイルスに対する抑制効果を確認
パナソニックと日本繊維製品品質技術センターは、約6畳という広い試験空間で、ガーゼに付着させた新型コロナウイルスに対する「帯電微粒子水(ナノイー)」技術の抑制効果を実証した。