東芝が新経営方針を発表、非中核だった昇降機も照明も東芝テックもコア事業に:製造マネジメントニュース(3/3 ページ)
東芝が新たなグループ経営方針を発表。以前に非注力事業とされた昇降機事業や照明事業、東芝テックも含めた傘下の各事業をコア事業と定め、これらコア事業から得られるデータの活用が可能なプラットフォームの構築によるDXを進めた後、2030年以降に量子技術によって各プラットフォームが最適化されるQXを目指す。
QXに向け量子技術の研究開発と実商用化を加速
外部硬直性に対しては、ポテンシャルの高い技術の価値顕在化のため外部パートナーの活用の積極的な検討で対応していく。例えば、2030年に12兆円の市場規模が見込まれる再生医療で有用な生分解性リポソームについては、米国のFDA(食品医薬品局)による認証がビジネス拡大に重要なことを考慮して、国内にこだわらず海外パートナーの活用もあり得るとした。
会見の後半では、東芝におけるDE、DX、QXが見込める事業を紹介。DEでは、東芝エレベータのエレベーターを用いた「EaaS(Elevator as a Service)」や、東芝ライテックのカメラ付きLED照明「ViewLED」、工場やプラントにおける制御のクラウド化を取り上げた。一度は非中核事業に指定された昇降機事業の東芝エレベータと照明事業の東芝ライテックの製品が出てきた点は、今回策定した経営方針が「現行の東芝の力を全て引き出して企業価値向上を目指す」というコンセプトを強く表している。
また、制御のクラウド化では、ハードウェアベースのPLCからソフトウェアベースPLCへの移行する中で、東芝がハードウェアベースのPLCで優位だったからこそソフトウェアベースPLCをキャッチアップできなかった事実に言及しながら、「現在、クラウドベースでリアルタイムに制御する技術を開発中であり、再び良いポジションに立てる可能性は十分ある」(島田氏)とした。
プラットフォーム同士で連携するDXでは、VPP(バーチャルパワープラント)と発電事業者向けプラント監視ソフトウェアなどを組み合わせられるエネルギーソリューション、東芝テックのPOSとさまざまな小売業での採用が広がっている東芝データの「スマートレシート」を組み合わせた購買データ事業、東日本大震災を契機にBCP(事業継続計画)向けに展開を広げてきた「Meister SRM」を起点とするサプライチェーンなどを挙げた。
そしてQXでは、未来の量子社会到来に向けて量子技術の研究開発と実商用化を加速する方針で、特に量子暗号技術については世界的に優位なポジションにあり、英国のBTなどと進めているグローバル展開を促進していく。2022年5月23日に、一般社団法人化を発表したQ-STAR(量子技術による新産業創出協議会)では、島田氏が代表理事を務めており、国内外の連携による量子技術の産業創出にも積極的に働きかけていくとしている。
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