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東芝経営陣刷新、上席常務の島田氏が新社長に、会社分割は「予定通り進める」製造マネジメントニュース

東芝は2022年3月1日、執行役上席常務の島田太郎氏を新たな代表執行役社長 CEOに任命する社長人事を発表した。併せて、東芝エレベーター社長の柳瀬悟郎氏が代表執行役副社長 COOに就任する。代表執行役社長 CEOだった綱川智氏は執行役を退任するが取締役会議長および取締役としての役割を継続する。

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 東芝は2022年3月1日、執行役上席常務の島田太郎氏を新たな代表執行役社長 CEOに任命する社長人事を発表した。併せて、東芝エレベーター社長の柳瀬悟郎氏が代表執行役副社長 COOに、東芝 デバイス・ストレージ事業を担う佐藤裕之氏が代表執行役専務に就く。代表執行役社長 CEOだった綱川智氏は執行役を退任するが、取締役会議長および取締役としての役割を継続する。

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前CEOの綱川氏(左)と新CEOの島田氏[クリックで拡大] 出所:東芝

臨時株主総会前に新体制を

 東芝では元代表執行役社長 CEOの車谷暢昭氏による上場廃止への動きなども含め、経営陣と主要株主との信頼関係が揺らいでおり、それが経営の混乱を生む状態が続いている。2021年11月には、東芝本体からインフラサービスとデバイスの事業を分離独立させ、3つの独立会社に分割する方針を発表したが、わずか3カ月後の2022年2月にこの方針を変更。東芝本体にインフラサービス事業を残し、デバイス事業のみを分離独立させる2分割案へと切り替えている。

 今回の社長交代についても、この企業分割案の決議を図る臨時株主総会を2022年3月24日に開催予定としていることから、報道陣からも疑問の声が上がった。これに対し、経営陣の指名を行う東芝 指名委員会 委員長のレイモンド・ゼイジ氏は「分割案の発表後も含め株主とのさまざまな対話を重ねてきたが、臨時株主総会も控える中で、人事面でもこの分割案をスピードを持って実現できる体制であることを示したかった。その意味で臨時株主総会前にしっかり考えてもらえるタイミングで発表すべきだ考えた」と語っている。

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東芝新社長に就任する島田太郎氏 出所:東芝

 対象としては、社外と社内のさまざまな人材の中で検討を進めたというが「社外では移行リスクも含め分割プランに不確実性を生むことになる。再編を滞りなく進めるために内部の人材から登用した」(ゼイジ氏)としている。

 島田氏は、1990年に新明和工業に入社して航空機設計などに従事した後、1999年にSDRC(Structural Dynamics Research Corporation)に入社。SDRCがM&Aなどを経てUGS、シーメンスPLMソフトウェアとなる中、2010年4月にシーメンスPLMソフトウェア日本法人の社長兼米国本社副社長に就任した。その後、2014年3月からシーメンスのドイツ本社でセールス開発部門に勤務し、2015年9月からシーメンス デジタルファクトリー事業本部長およびプロセス&ドライブ事業本部長を務めた。2018年10月に東芝に入社し、CPS×デザイン部担当、CPS×デザイン部バイスプレジデント、デジタルソリューション所管など、DX(デジタルトランスフォーメーション)に関連するさまざまな役割を担ってきた。

 新社長就任に当たり島田氏は「自分ではデジタルが分かる初めての社長だと考えている。東芝には宝物のような技術や人材がある。しかし、現在は体験ベースの価値提供が中心となって起きており、個々の技術単発の強みでは飛びぬけたものにならない。保有する技術を組み合わせて、ユーザー体験のサービスレベルまで考えてサービスを作ることが重要だ。東芝の中のあるさまざまな技術を、経営視点に立ち、ソフトウェアディファインドで東芝の事業を再定義することで、さまざまな価値を作ることができる。全体を見た上で東芝の力を発揮できるような事業展開を進めていきたい」と今後の方向性について語っている。

 一方、退任する綱川氏は「社長に再度就任した2021年4月に『早期に次の世代に引き継ぐこと』を約束したが、新たな若い経営陣が決まり、自信を持って引き継ぐことができる。1年間、株主と信頼構築のために対話を重ねてきた。分割計画についても、中核事業で専門の経営陣が俊敏な経営陣が俊敏に経営することがカギだと考えて計画を進めてきた。時代が変化する中で、ポートフォリオを変えず、会社の形を変えずに維持することはあり得ない。この計画が株主にとっても、従業員にとっても、顧客にとっても、社会にとっても最善だと信じている」と語った。

分割計画と事業売却案見直しの可能性も?

 島田氏を含む東芝の新たな経営陣は「分割計画を加速させるため」(ゼイジ氏)とする指名委員会の方針にのっとり、基本的には2022年2月発表の2分割案および事業売却案などの方針を踏襲する考えだ。「経営は1人の社長で突如として激変するようでは継続的発展は難しい。受け取ったものを進化させ、全てのオプションを検討しながら深めて発展させるのが、私の役割だと考えている」(島田氏)。

 ただ「執行役として取締役会で決まった方向性を執行するだけではなく、執行側の立場として意見は発信しその中ですり合わせながら実行していく。さまざまな考えがあるが、取締役会で議論した上で話すことなので今は差し控える」(島田氏)としており、細部の方向性の変更などは今後出てくる可能性もありそうだ。ちなみに今回の分割計画策定の場に島田氏も執行役の1人として参画していたが「策定の過程で島田氏はどういう意見だったのか」という質問に対しては「それは申し上げることができない。会社は合議しその中で決定して進めていくものだ」と島田氏は答えている。

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